埼玉県立秩父高校(秩父市上町)の放送部が7月21日~23日、「第73回NHK杯全国高校放送コンテスト」全国大会に出場した。全国から517校が参加する中で、同校の全国大会出場は創作ラジオドラマ部門で4年ぶり、アナウンス部門では32年ぶりとなる。
アナウンス部門に出場した3年の大平かなみさんは、校内放送ニュースの形式で原稿を作成した。同校に常駐する県内初の「高校魅力化コーディネーター」神宮一樹さんへ取材し、仕事内容やその思いなどをまとめた。1分30秒の制限時間に対し、原稿を335文字に絞り、間や抑揚を意識して発声した。「秩父」という言葉は、地元と標準語でアクセントが異なる。大平さんは単独での使用を避け、「秩父高校」「秩父地域」などの熟語を使うことで、地元のイントネーションのまま自然に読めるよう仕上げた。
準備を重ねた原稿の表裏の余白には、本番へ臨む大平さんに向けて部員全員が手書きでメッセージやイラストを書き込んでいた。大平さんは「アナウンスは神宮さんの魅力を伝えられ、最後までやり切ることができた。大学でもサークルで放送活動を続けたい。一人では難しくても、社会人が出場できる大会もあるので、何歳になっても挑戦できたら」と話す。
創作ラジオドラマ部門の出品作「鉄砲雨」は、秩父地域でも時折姿が目撃されるなど身近な問題である「クマ被害」を題材にした約7分半の作品。劇中では、人を傷つけてしまったことに苦悩しながら逃げるクマと、負傷した仲間のために銃を手に追い詰める猟師たちの緊迫した攻防を描いた。人間とクマの双方が生き残りを懸けて主張をぶつけ合い、終盤には「本当にクマだけが悪いのか」「どうすればよかったのか」と聴く者に問いかける形で物語を構成した。
制作は脚本と監督を務めた3年の大平かなみさんと、編集を担当した田中葵さんを中心に部員が協力して進めた。効果音には既存音源だけでなく、クマのそしゃく音として部員3人がキュウリを食べる音を録音するなど、身近な音を自ら録音して採用した。猟師役には野球部の男子生徒に協力を依頼し、数十回に及ぶ録音を重ねた。大平さんは「身近にあるクマ被害の課題を、客観的かつ自分事として考えるきっかけになればと企画した」、田中さんは「1年生も最初は手探りだったが『もっとやりたい』と何度も録音に付き合ってくれて、共に成長できた」とそれぞれ振り返る。
全国大会を通して、部長の川田いろはさんは「入賞には届かなかったが、全国に導いてくれた仲間に感謝している。3年生全員が真面目に取り組む背中を見せられたことで、後輩たちの制作意欲に火がつき、部全体の成長につながった」と話す。
顧問の嶌田矩晃教諭は「放送部は発声だけでなく、脚本、録音、カメラ、編集など多様な挑戦ができる場。校内からは体育祭の実況や行事の放送を行ったり、外部から司会の仕事や動画のナレーションの依頼が来たりもする。チームで一つのものを作り上げる経験もできて、個々の可能性も広がる」と話す。
9月5日に行われる文化祭の一般公開日には上映会を行う。今大会のラジオドラマをはじめ、同部がこれまで手がけてきたテレビドラマやドキュメンタリー作品なども上映する。さらに朗読劇では午前と午後で2種類の作品を上演する予定。