秩父銘仙の老舗織元「逸見織物」(秩父市黒谷)が8月28日、創業100周年に向けた記念企画として、同社に伝わる図案の復刻柄を秩父銘仙館(熊木町)で捺染(なっせん)した。当日は4疋(ひき、8反分)を染め上げた。
同社は1927(昭和2)年に逸見忠重さんが創業し、現在は孫の恭子さんが3代目として事業を引き継ぐ。創業100周年の節目に向け、保管されていた1940(昭和15)年ごろの端切れから柄を復刻する企画を準備。事前に行った顧客投票で人気の高かった「クジャクの羽とバラ」「シャクヤク」の2柄を選び、横瀬町の業者に染色用の型枠制作を依頼していた。7月に今年の秩父夜祭に向けた中町町会の衣装約100反の染色を終え、大きな仕事に一区切りがついたことで、今回の染色作業に取りかかった。
秩父銘仙は、織る前の縦糸に型紙を当てて染める「ほぐし捺染」という技法が特徴の絹織物。1つの柄に対して色ごとに型を用意し、1型1色ずつ手作業で染め上げていく。恭子さんによると、昔に比べ現在の絹糸は倍ほどの太さがあり、当時の6色~7色を使う精緻な型をそのまま用いると柄がつぶれてしまうという。そのため、現代の絹糸でも美しく見えるよう、柄の一部を統合したり細部を省略したりして、3色~4色の型へと図案を再構成した。
当日は、職人で「秩父銘仙後継者育成講座」の講師も務める国本勝利さんや恭子さんのほか、国本さんから技術を学んだ同講座6期生の榊麻紀さんと渡辺絵美さんが作業に当たった。2人は習得した技術を生かして起業準備を進めており、この日も作業台を囲んで縦糸の目印と型枠の位置を正確にそろえ、1型ずつ染料を刷り込んだ。「クジャクの羽とバラ」は黒地に青のグラデーションと紫地に緑のグラデーション、「シャクヤク」も異なる配色で2色ずつ染め上げた。
染色後の反物は蒸して乾燥させ、織りの工程を経て、10月末ごろに秩父地場産センターの展示会で披露する予定。恭子さんは「クジャクの羽とバラは、父も『いつか復刻したい』と話していた思い入れのある柄。昔の図案を現代によみがえらせる難しさはあったが、父の思いや投票してくださった方の期待を形にできて感慨深い。10月末の展示会に加え、年内か来年には100周年を記念したイベントも実現させ、次の世代へ技術をつないでいきたい」と話す。