特集

秩父高校・国際教養科 
苦手でも大丈夫、英語で広がる選択肢

秩父高校 特集第3弾:国際教養科

2026年4月、秩父高校に誕生した「国際教養科」に、13人の第1期生が入学しました。英語が得意な生徒はもちろん、「苦手だけれど挑戦したい」という生徒も飛び込んできました。
特集第3弾は、開科から1カ月半が経った5月、学科長の大林幸平先生と担任の嶌田矩晃先生に話を聞きました。楽しく学ぶ場を、どうつくるか。お二人の先生が語る、英語の授業と生徒の様子をお届けします。

大林先生と嶌田先生

大林先生

大林幸平 学科長
(おおばやし・こうへい)

深谷市出身。大学で英文学(生成文法・統語論)を専攻後、オーストラリアへ1年間ワーキングホリデーを経験。臨時的任用職員を経て2018(平成30)年に秩父高校に着任。自身の「高校時代は英語が大の苦手だった」という経験を原点に、この学科のカリキュラムを中心的に組み上げた。

嶌田矩晃 担任
(しまだ・のりあき)

東秩父村出身。大学で英文学(意味論・語用論)を専攻し、2015年より教員として勤務。松山高校を経て2025年より秩父高校に着任。幼少期から英語が好きで、自然に職業へとつながった。「Don't be afraid. Just do it.(恐れずにやってみよう)」を信条に、失敗を学びの一歩ととらえる授業づくりを大切にしている。

嶌田先生

学科の出発

2026年4月10日、入学式から2日後に学科開設セレモニーが行われました。司会から教職員のあいさつ、生徒代表の言葉まで全編英語で進行し、ALT(アシスタント・ランゲージ・ティーチャー:英語などを母国語とする外国語指導助手)を含む教職員が英語で自己紹介。第1期生13人は、新しい学科の第一歩をその場で体感しました。

学科のロゴは、上部に秩父高校の「いちょう祭」や校章のモチーフとして地域に親しまれているイチョウの葉を、下部は生徒一人一人の価値観から生まれる「種」を表現しています。

国際教養科のロゴ
国際教養科のロゴ

セレモニーで手渡された1枚のメッセージがあります。「10 Ways to Grow as a Learner(学び手として成長する10の方法)」と題された、10項目の学びの指針です。

10 Ways to Grow as a Learner
内容は10項目で、「内なる強さを育む」と「外なる世界へ挑む」の二つの柱で構成されています。「好奇心を持とう」「次の自分をデザインしよう」といった内面を育む項目から、「まずはやってみよう」「対話で橋を架けよう」といった外に踏みだす項目まで、生徒に育ててほしいことが並んでいます。

授業のこと

国際教養科の英語授業は、普通科とどう違うのか。まず時間数から異なり、英語の授業は週8時間(普通科は週6時間程度)。そのうち6時間は、「総合英語」という科目で日本人教員とALTの2人体制で行います。秩父高校には南アフリカ出身とアメリカ・ロサンゼルス出身の2人の女性ALTが在籍しており、国際教養科はクラスを半分に分けた少人数授業を行っています。

 ー 普通科とは教材も異なるものを使っているそうですね。

大林 イギリス・ケンブリッジ大学が、英語学習者向けに作っているテキストを使っています。専門家が「このタイミングでこの発音を入れる」「このエクササイズの次はこれ」と緻密に設計していて、順番通りに進めていくことで英語が身に付くように組まれています。私たちが大きくアレンジする必要がない分、生徒にどう楽しく学んでもらうかに集中できます。

嶌田 2025年から試験的に授業に取り入れていましたが、日本語の記載は一切なく、全て英語表記ですし、従来の教科書とは異なるので最初は少し戸惑いました。エクササイズとアクティビティが順番に積み上がっていくので、授業が進むうちに「なるほど、これで力がつくんだな」とわかってきました。慣れてしまえばとても教えやすいです。

 ー ALTの先生との授業は、どう進めていますか?

嶌田 基本は英語で授業を進めます。文法用語など必要な部分は日本語も使いますが、比率は英語が圧倒的に高いです。ディスカッションやペアワークでは、私とALTが教室を回りながらアドバイスをします。テキストがイギリス英語で書かれているので、アメリカ出身のALTに「アメリカではこう言う」など、表現の違いを聞いて、その場でシェアすることもあります。私自身も毎回勉強になっています。

大林 ALTの2人はとてもフレンドリーで、授業以外でも生徒たちとよく話しているのを見かけます。週6時間一緒に過ごしているので、生徒の名前もよく覚えていて、接点も自然に増えています。

ALTの先生

 ー 一人一人が英語を使う機会を、授業の中でどうつくっていますか?

大林 1回30分・年間80回、海外の講師と1対1で行うオンライン英会話を取り入れています。日常会話のフレーズ練習やロールプレイング、慣れてきたら時事ニュースについてのディスカッションなどもできます。授業でインプットしたことを実際に使ってみて、うまくいったこともいかなかったことも、次の授業で振り返る——そのサイクルを大事にしています。

嶌田 最初はみんなずいぶんそわそわしていました。一人一人のペースに合わせながら続けているうちに、今では少しずつ画面の向こうの講師と自分の言葉でやりとりできるようになってきています。

オンライン英会話

 ー ライティングの機会はいかがでしょう。

嶌田 全員にノートを1冊ずつ配って、毎日2行でいいからと英語で日記を書いてもらっています。毎日回収して、コメントを書いて返す。文法は細かく直しませんが、スペルは少し直したりします。テストではないので、とにかく書く習慣をつけてほしい。2行でいいというのは「続けられること」を最優先に考えました。3年間続けたら、ノートが何冊にもなる。それが生徒自身の自信になると思っています。

英語日記

第1期生の声

二人の国際教養科生に話を聞きました。二人とも秩父市の中学校出身、サッカー部の福島さんと、バドミントン部の楮本さんです。英語への入学前の感覚は、二人でかなり対照的でした。

福島さんと楮本さん

 ー 国際教養科を選んだきっかけを教えてください。

楮本 英語はもともと好きでした。母が洋楽をよく聴いていて、小さいころから英語に触れることが多かったんです。将来は外資系の仕事に就きたいと思っていて、高校を選ぶときに秩父高校に国際教養科ができると知ってここに決めました。

福島 僕は英語は好きっていうほどでもなく、普通でした。やる気はあるんですけど、成績も特別良くはなくて、好きとか得意ということではないです。将来的にやりたいことはまだ決まっていないですが、国際教養科で学んだら自分の世界や可能性が広がるかなと思って入学を決めました。

 ー 入学前に不安だったことはありますか?

楮本 「総合英語」の授業が英語中心と聞いていたので、正直怖かったです。英語が好きと言っても中学レベル以上ではないですし。でも実際に授業を受けてみると、中学校で学んだ基礎的な部分から学ぶことができ、楽しく学習できています。

福島 やる気はあるんですけど、英語の学力がなかなかついてこなくて。そんな自分がついていけるのかなという不安はありました。入学後のセレモニーも、全部英語で聞き取れない部分もありました。

 ー 入学してから、気づいたことや変わったことはありますか?

福島 英語のことを考える時間が増えました。中学のときはテスト勉強のためだったけど、英語って言語だから、テストだけのために勉強するのはもったいないと思うようになってきました。

楮本 語学留学が日本の高校に居ながらできているような感じがします。英語で英語を学ぶ体験が、授業として積み重なっていっています。英語がとても得意な生徒や留学経験のある生徒もいて、授業中に知らない単語を使っているのを聞いて刺激を受けます。

ALTの先生との授業

 ー 大変だと感じる場面はありますか?

楮本 テストがちょっと大変です。問題文も英語なので、そもそも問題の意味をつかむところから大変で。内容だけじゃなくて、問題文に使われるような英語も勉強が必要ですね。

福島 英語だと言葉が急には出てこなくて、自分の思うように表現することができない場面があります。単語を地道に覚えていかないとです。でも、伝わったときは「よし」という気持ちになります。

 ー 英語が苦手な中学生に伝えたいことはありますか?

福島 英語が苦手でも、秩父高校の国際教養科には英語と向き合う環境があります。英語を上達したい気持ちがあればきっとついていけると思います。

楮本 授業は中学校レベルの基礎から始まります。分からなくても先生が説明してくれるし、楽しく学べています。英語が得意でも苦手でも、楽しく学びたいという気持ちがあれば大丈夫だと思います。

教室に設置されている英語の書籍

英語との出会い、これからの活動

お二人の先生に、英語との出会いから、授業への思い、これからの活動について聞きました。

 ー ご自身の経験が、今の授業づくりに生きていると感じることはありますか?

大林 私は高校時代は英語が大嫌いでした(笑)テストで20点、30点台を取っていて、なんでこれを勉強するんだろうとずっと思っていました。浪人した時にこのままではダメだと思って、一念発起して向き合ってみたら、面白いと思えるようになったんです。「高校生のころに、こんな授業があったらよかったな」と思いながら授業をしています。先生とALTが一緒にいる授業、少人数で話せる時間、オンライン英会話——自分が高校生だったらうらやましいと感じる授業をやりたかったんです。テストの点数で測るよりも、英語を使って伝わった、またやってみようという、プラスの循環を作りたいです。

嶌田 私はもともと教師になりたいと思っていました。昔から英語が好きだったので、英語教師になるのは自然な流れでした。でも今私たちがやっているような少人数でALTと一緒に学べる環境やオンライン英会話の授業は、自分が高校生のころにはなかった。だから羨ましいなと思っています。生徒には英語を好きになってほしいし、そのきっかけをつくりたいという気持ちで授業に臨んでいます。

 ー 生徒たちと取り組む行事を教えてください。

大林 2026年度は、6月9日には東京・江東区にある英語体験施設「TOKYO GLOBAL GATEWAY(TGG)」での研修を実施しました。ネイティブスタッフとの英語のやりとりや体験型のプログラムを通じて、授業で積み上げてきた英語を実際に使ってみる場になったと思います。まずは抵抗をなくして楽しさを感じてもらうことを大事にし、「伝わった」という小さな成功体験を積んでほしいです。国内で英語を使う体験を積んだ先に、7月末には秩父高校が毎年実施しているオーストラリア研修もあります。全校から参加者を募っており、2026年度は15人が参加予定です。国際教養科からも3人が加わります。

TGGでの研修1

TGGでの研修2

嶌田 2学期にはプレゼンテーションをテーマにした合宿も予定しています。どうすれば人に伝わるか、どう引き込むか。実践的なスキルを、泊まりがけで身につける機会にしたいと思っています。

中学生へのメッセージ

 ー この学科に進んだら、進路は限られますか?

大林 限られませんので、安心してください。英語以外の授業は普通科と同じで、日本語で受けます。卒業後に国際系の大学に行かないといけないわけでも、英語の職業でないといけないわけでもない。将来の夢がまだ決まっていない生徒も、美容や医療などに興味がある生徒もいます。英語が使えると選択肢が広がる。その選択肢を一緒に育てていきたいと思っています。

 ー 中学生や保護者の方へのメッセージをお願いします。

大林 体験授業は7月、10月、11月に実施します。学校説明会は7月、10月に行います。実際に国際教養科の授業を体験できるので、どんな雰囲気か、肌で感じてもらえると思います。百聞は一見にしかず、ぜひ一度、来てみてください。

嶌田 生徒一人一人がやりたいこと・なりたいことを最優先にサポートしていきたいと思っています。秩父の地から、世界とつながれる生徒を育てていきたいです。「Don't be afraid. Just do it.(恐れずにやってみよう)」。まずは一歩、踏み出してみてください。

秩父高校
設立: 1907(明治40)年5月7日
埼玉県秩父市上町2丁目23−45
TEL:0494-22-3606
https://chichibu-h.spec.ed.jp/

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