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「秩父吉田の龍勢祭」城峰瑞雲流が矢柄の竹を採取 作業場の完成祝いも

竹の採取の後に、改修してきれいになった作業場で完成を祝う会を行った

竹の採取の後に、改修してきれいになった作業場で完成を祝う会を行った

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 秩父市吉田地区で「秩父吉田の龍勢祭」の城峰瑞雲流(じょうみねずいうんりゅう)のメンバーが12月11日、来年打ち上げる龍勢の矢柄に使う竹の採取を行った。当日は竹の採取の後に、同流派の作業場完成を祝う会も開いた。

採取した竹の重さは約20キロ。乾燥後は約12~13キロになる。

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 毎年10月第2日曜に行う「秩父吉田の龍勢祭」は400年以上の歴史がある。椋神社(下吉田)の例大祭の「つけ祭」として行われる神事で、松や竹を使って「手作りロケット」を打ち上げて奉納しており、国重要無形民俗文化財にも指定されている。

 同祭りは「耕地」と呼ばれる小集落を基本に農家を中心にして流派が形成され、かつては地域のつながりが今以上に強かった。昭和40年頃から高度成長期に秩父地域でもサラリーマンが増え、地域のつながりだけでなく職場や友人などのつながりの流派も立ち上がっていった。現在は27の流派があり、城峰瑞雲流は吉田の石間地区の住民とその関係者約30人が所属している。

 12月の2~3週目になると霜が下りて竹の水分が少なくなることから、多くの流派がこの時期に竹を採取するという。当日は朝9時頃から吉田地区の竹林に入り、18メートルほどの真っ直ぐな竹2本を採取した。

 採取した竹の重さは約20キロで、昔は青竹のまま使っていたが、現在は軽くするために乾燥させており、乾燥後の重さは約12~13キロになるという。流派によって選ぶ竹の太さや長さは異なり、乾燥方法も屋外に立てて保管したり軒下に横にして保管したりするなど、さまざま。

 竹で作る「矢柄」は打ち上げる龍勢の方向舵の役目を担い、松の木を加工して作る火薬筒に取り付ける。さらに落下傘や唐傘や花火などの「背負い物(しょいもの)」を取り付けると龍勢となる。

 城峰瑞雲流は昨年までは龍勢の打ち上げ場所から車で15分ほどの石間地区で火薬を詰め込む前までの作業を行ってきたが、龍勢の打ち上げ櫓に近いキャンプ場跡地を借りて昨年9月頃から作業場として改修を進めてきた。

 龍勢はプロの花火職人が作るものではないことから「通称=農民ロケット」とも呼ばれる。同流派には森林組合、水道、電気、大工などさまざまな職業のメンバーが所属していることもあり、作業場の改修工事はそれぞれの技術を生かして行われた。床板の張り替えや土間のコンクリート施工、水洗トイレも設置。今後は露天風呂の設置も計画しているという。

 棟梁の篠塚良一さんは「龍勢は火薬を使って作る大きな花火のようなものだが、おもちゃの花火の規模ではないので十分な注意が必要。製造過程には規制もあるし、メンバーや近隣住民に危害が及ばないようにするなど、とても緊張する。夢の中で失敗を見ることもあって『現実になったらどうしよう』と不安になることもある」と話す。

「私たちの流派は『龍勢師』というよりは『龍勢好きの仲間』という意識が強い。仕事ではないし、ただ好きだから一生懸命作る。毎年打ち上げてみるまで分からないから、うまくいけば気持ちが良いし、失敗したら本当に悔しい。一年中龍勢のことを考えているわけではないが、頭の片隅にはいつも龍勢がある。来年はどうなるか、新しい作業場を活用して良い龍勢に仕上がれば」と期待を込める。

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