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秩父地域初 IT分野のエキスパートバンクにMAREMI代表が登録

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 皆野町のITコンサルティング企業「MAREMI(マレミ)」代表の吉岡健太朗さんが昨年12月、埼玉県商工会連合会から専門家を派遣する専門家派遣事業(エキスパートバンク事業)で、秩父地域で初となるIT分野エキスパート(専門家)に登録されました。

 専門家派遣事業とMAREMIの取り組みについて、皆野町商工会の経営支援員の笠原清史さん、MAREMIの吉岡さんに話を聞きました。

吉岡さん(左)、笠原さん(右)
吉岡さん(左)、笠原さん(右)


 吉岡さんは1988(昭和63)年、皆野町出身。東証1部上場企業の情報システムでキャリアをスタートし、会社員時代には医療分野で生産性を上げるためのDX事業などに携わっていました。

 3人の娘や妻と過ごす時間が少ないことなど、今後のライフプランを見つめ直して会社を退職し、2022年3月に創業。社名のMAREMIは3人の娘の頭文字だそうです。実家のある皆野町を拠点に活動を始め、現在は住まいのある川口市と皆野町の2拠点で活動しています。

 吉岡さんは不便なことや面倒くさいけど『何となく続けている手間のかかる仕事』の仕組みを変え、便利になったり生産性を上げて残業を減らしたりして、もっと大切なことに時間を使ってほしいと呼びかけます。

 ー 専門家派遣事業(エキスパートバンク事業)について、教えてください。

笠原 エキスパートバンクは小規模事業者や起業を考えている方に、専門知識を持った人を派遣して問題解決のサポートを行う制度です。サポート内容の一例としては、飲食店の新メニュー開発支援(フードコーディネーター派遣)、新規事業・新規オープン店の運営方法などへの助言・支援(中小企業診断士派遣)、店内レイアウトや商品ディスプレー・ラッピングに関する助言や支援(ディスプレーコンサルタント派遣)、商店街の一般社団法人立ち上げ時の事業計画作成支援(税理士派遣)など多岐にわたります。

エキスパートバンクの流れエキスパートバンクの流れ

笠原 エキスパートバンクに登録されている人は、現在埼玉県では200人ほどいますが、秩父地域では吉岡さんがIT分野で初めての登録者です。吉岡さんが埼玉県のエキスパートバンクに登録されたことで、埼玉県商工会連合会地区の事業者からIT分野のご相談ができるようになりました。

 ー 秩父地域のIT化、DX化の状況はいかがでしょうか?

笠原 まだまだITやDXなどの相談は多くないと思います。ウェブサイトやECサイトの制作、IT導入補助金、LINE公式アカウントやSNSの運用相談は増えてきていますね。

吉岡 ある程度大きな企業は既にDX化が進んでいる印象です。高齢な代表者が切り盛りする事業者や、ローカルな商売のところはこれからでしょうか。世代交代の際に、手作業でやっていた経理面などを中心にIT化したいというご相談も頂きます。

 ー 何から相談したらいいか分からない、という方も多そうですね。

吉岡 僕が相談を受けた内容の一部を紹介します。

・個人経営の飲食店で、青色申告をアナログ申請からクラウド会計ソフトで行えるまでを支援。
・社員の昼食を、毎朝紙に書いて確認していた企業にタブレットPCを導入。弁当の確認や昼食代を給与天引きするために手入力していた煩雑な作業を軽減。
・電話対応時における手書きメモでの伝達を廃止。受電内容はウェブフォームに入力し、担当者のメールへ自動送信・即時確認が可能に。 
・安否確認にビジネスチャットのツール導入。気象庁がマグニチュード5以上の地震を通知するとチャットbotが自動発信し、社員が安否確認をスタンプで返信。

吉岡 当たり前になっている業務の『ちょっとした不便さ』から小さなストレスを日々感じて、ずっと悩んでいる方がいるかもしれません。高価なソフトを導入しなくても、無料のツールでできることも多くあるので、工夫して業務効率を上げていけると良いなと思います。

吉岡さん
MAREMI代表の吉岡さん

 ー MAREMIや吉岡さんについて、笠原さんはご存じでしたか?

笠原 吉岡さんが商工会に相談にいらっしゃるまで知りませんでした。吉岡さんは昨年2月に商工会に来館いただきました。

吉岡 秩父市でDX関連のセミナーを開催する際、集客活動の一環で皆野町商工会にもチラシを置いてもらえないかなと思い、訪れました。『会員だったらチラシが置ける』と言われたので、最初は軽い気持ちで商工会の会員になりました(笑)。現在は皆野町商工会だけではなく、秩父市商工会議所にも所属しています。

笠原 中小企業で事業をしている方は、一定の条件をクリアして会費を支払うことで会員になれます。会員同士で業種を超えたつながりもでき、専門家への相談もできます。会員になることで事業の信用を高めるだけでなく、商工会の活動を通じて地域発展への貢献にもつながります。積極的に事業をしている方、これから開業する方などのメリットは大きいと思います。。

吉岡 創業が2022年3月で、1年たってみて経営について分からないことがたくさんありました。労務についても、これから知識を増やしていかなくてはと思っていました。

 ー 吉岡さんは相談をする側でもあり、相談を受ける側でもあるのですね。

吉岡 MAREMIも補助金や融資のことなど、お金に関わることなど専門家に支援をしてもらっています。自分はIT分野には詳しいと思うのですが、他の分野は『何が分からないかが分からない』という状態です(笑)

笠原 『何をどうしていいか分からない』『自分は困っていない』と思っている方もいます。困っているけど、心理的に『社内で言い出しづらくて改革できない』ということもあるようです。内部の人間からだと社内の改革が進まない場合でも、『社外の専門家が言っているので、やってみましょうよ』と、進めやすい部分もあるのかなと思います。

吉岡 相談してくる人は『変わろうとしている前向きな人』だと思います。変革する気がない人に寄り添うことは難しいですが、変革したい人には寄り添えます。『何をしていいか分からないけど、変わりたい』という人には支援できると思うので、困っていることを明確にするところから相談できると思います。

笠原 商工会に相談に来る人は『自分で情報を取りに来ようとしている人』かなと感じます。『そもそも商工会って何?』と思っている人も多いかもしれませんが、開業支援から確定申告まで支援している事業者も多くいますので、事業や創業の悩みは一人で抱えこまずにどんな小さなことでも相談してほしいです。

 ー エキスパートバンクに登録されたことについて、いかがでしょうか。

吉岡 エキスパートバンクに登録されたことで間口が広がり、相談を受けやすくなったと感じています。こういった機会がもらえたことに、とても感謝しています。

笠原 エキスパートバンクについて、まだまだ制度を知らない人が多いと思います。個人相談だと5時間まで、社員研修などの集団相談の場合は原則として1回無料で対応できます。商工会を通して使う制度なので、うまく活用していただきたいです。相談がこれから増えていくのではという期待と、吉岡さんの事業がうまくいけばと応援しています。

 ー 最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

吉岡 『よく分からないけどITを導入したい』『誰に相談したらいいか分からない』という事業者の方はエキスパートバンクの制度を活用することで、無料で支援がスタートできるので、ぜひ気軽に相談してみてください。

笠原 吉岡さんはITの知識が豊富なのはもちろん、コミュニケーション力が高く、相談者とのやり取りが上手だなと感じます。秩父地域でITやDXのセミナーから伴走支援までできるのは、現在は吉岡さんだけです。一社一社の支援は大変だと思いますが、企業の活性化や成長が秩父地域の活性化につながると思うので、頑張っていただきたいです。事業のことや、確定申告のこと、創業のことなどは商工会に気軽にご相談ください。


MAREMI https://maremi.biz/

皆野町商工会 https://www.shokokai.or.jp/11/minano/


 

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