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秩父の染物店「るりばら銘仙」が半年 次世代の継承目指す

店主の矢野さんと店長見習いの猫の「銘さん」

店主の矢野さんと店長見習いの猫の「銘さん」

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 染物店「るりばら銘仙-高橋ミート店」が秩父にオープンして、9月21日で半年を迎えた。店主は元秩父市地域おこし協力隊の矢野倫代さん。

「るりばら銘仙」内観

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 番場通りから路地を入った精肉店「高橋ミート」跡にオープンした同店。矢野さんは「昔から親しまれていた『高橋ミート』の名前が店名に入っていた方が秩父の人に場所を認識してもらいやすいと思い、店名に残した」と話す。

 矢野さんは前職では雑誌やウェブのデザイナー、IT企業でエンジニアの仕事をしていた。会社員として働く一方、「昔から好きだった着物に携わりたい」との思いで着物店の手伝いもしていたという。

 矢野さんは2019年12月に秩父で活動を始めてから、秩父銘仙の普及や継承に努めている。秩父銘仙は明治時代に秩父で始まった絹織物。無地や縞模様が庶民の着物で一般的だった時代に、銘仙は「ほぐし捺染(なっせん)」という染め方を取り入れたことで、華やかな色使いや大胆なデザインが庶民にも着られるようになり、大正から昭和初期にかけて全国的に人気となった。

 2013(平成25)年には国指定の伝統的工芸品となり、現在も生産を続けているが、現在、秩父市内で捺染加工店として営業している工房がなく、矢野さんが伝統を引き継ぐかたちとなっている。「3年間の協力隊活動では、技術習得だけに時間を取るわけにはいかず、どこまで学べるか不安だった。とても厳しい職人の方もいて、いつも怒られてばかりだったが、『捺染職人になれる』と背中を押されたことで、この店を始める勇気が湧いた」と振り返る。「今でも数人の先輩職人に技術を教えてもらったり、道具を頂いたりと面倒を見てもらっていて、ありがたいし、心強い。『1』と『0』では全く違うのでなくならないように、ゆくゆくは自分が引き渡してもらった秩父銘仙の捺染の技術を次の世代に継承できるように成長していきたい」とも。

 同店は、平日は矢野さんが商品を作るための工房として利用し、年内にオリジナル秩父銘仙の反物の完成を目指している。土曜・日曜は一般客向けの体験工房として営業。ハンカチや手ぬぐい、トートバッグなどへの染物体験ができる。

 矢野さんは「染料を使った染めだと、洗ったり乾かしたりしながら3時間ほどかかってしまう。営業を始めてから、待ち時間に近くを観光してもらえる立地だと気づいた。神社やレトロな喫茶店など、お客さまには待ち時間も利用して秩父を楽しんでもらえているのでは」と話す。

 6月には縁あって保護猫を引き取り、店長見習いの猫の「銘さん」も接客を行う。猫が苦手な場合は事前に教えてもらえれば店頭に出てこないようにするという。

 「顔料を使った体験なら1時間ほど。染める作業の後にアイロンをかけてすぐに持ち帰れるし、体験の合間に銘さんと遊んでくれるお客さまもいらっしゃる。スケジュールに合わせて染め体験を楽しんでほしい」と呼びかける。

 営業時間は、土曜=12時~17時、日曜=10時~15時、臨時休業はインスタグラムで知らせる。染色体験は1,500円~。予約が空いていれば当日受け付けも行う。

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