秩父札所で現在行われている「秩父札所午歳(うまどし)総開帳」に合わせて、秩父旅館業協同組合による「令和観音」の巡回展示が5月15日、「旅館比与志」(秩父市野坂町)で始まった。秩父札所連合会と同組合が取り組む札所文化の維持や継承、地域活性化を目的とした連携事業の一環。加盟宿泊施設のうち5施設を、11日間ずつ、順次巡回する。
秩父の札所巡礼は徒歩で回ると5日程度を要することから、古くから宿泊を伴う文化として宿が巡礼者の滞在を支えてきた。今回の巡回展示は同連合会からの提案を受けて実現したもので、1963(昭和38)年創業の旅館比与志が最初の展示会場となった。ロビーの一角に、直射日光を避けて観音像を安置。普段から館内の生け花を手がける秩父銘仙コレクターの木村和恵さんが花を添えた。同館は宿泊客限定で公開するが、以降の巡回施設は一般公開する。
同組合は総開帳に合わせ、江戸末期に描かれた「秩父札所観音霊験記」を元にした全34枚のカードセットを制作し、2月に加盟施設で販売を始めた。カードに使う画像は、同館3代目支配人の前川拓也さんが伝統文化を伝えるために生成AIを活用して制作。もともと前川さんが自身のインスタグラムで発信していた画像を元にした。
総開帳に向けた組合内での話し合いをきっかけに組合全体の事業へと発展し、1500セットを用意した。カードセットは2,000円。店頭販売や宿泊プランへの同梱など、取り扱いは施設ごとに異なる。各カードには2次元コードを印字し、スマートフォンで読み取ると英語の解説文を閲覧できる。今回の「令和観音」の巡回展示は、同カードによる巡礼文化の発信に取り組む施設のうち、5施設が順次担当する。
同館では今回の総開帳が始まってから6組の外国人旅行者が訪れており、そのうち2組は7~8泊の連泊で滞在した。もともとは山歩きやハイキングを目的に来日し、札所巡りの存在を知らなかった旅行客に対し、前川さんが巡礼を提案。毎朝スタート地点まで送迎するなどして、結願(けちがん)に至ったケースもある。前川さんは「外国人旅行者にも札所巡りを広めていきたい。体験した人が帰国後に魅力を伝えることや、世代を超えて巡礼文化が引き継がれていくきっかけになれば」と話す。
令和観音の巡回展示は同館で5月25日まで展示した後、5月27日から「新木鉱泉旅館」(山田 12~20時)、6月8日から「ゆの宿和どう」(黒谷 11~14時)、6月20日から「長生館」(長瀞町長瀞 7~21時)、7月2日から「ホテル美やま」(山田 13~15時)へと引き継がれ、7月12日まで行う。