秩父市内の荒川河川敷で巨大なサメの仲間「メガロドン」の歯の化石が見つかり、現在、長瀞町の「埼玉県立自然の博物館」(長瀞町長瀞)の特別展「古秩父湾ー秩父盆地の海獣の海ー」で公開している。
この化石は5月20日、秩父・長瀞エリアで自然探求体験を展開するプロジェクト「WITH RIVER(ウィズリバー)」のガイドを務める秩父市出身の加藤広洋さんと大村拓海さんが、和銅黒谷駅近くの視察中に発見した。少雨の影響で水位が下がった河川敷で、普段は水中に沈む岩を見つけ、ハンマーで割って化石を掘り出した。加藤さんは幼少期から20年以上の発掘経験を持つ。
発見した化石の大きさは約10センチ。メガロドンは今から約200万年前~2500万年前に世界の海に生息していた巨大な肉食性のサメで、歯の縁に鋸歯(きょし)と呼ばれるナイフのように薄く細かい切れ込みがあるのが特徴。同館主任学芸員の北川博道さんによると、「今回見つかった1本の歯から正確な体長を推定することは難しいが、館内につるす12メートルの生体復元模型より一回り小さい10メートル前後」と話す。発見場所や日時などの情報が明確な公的報告としては、1983(昭和58)年以来の貴重な事例となる。
同館は、国指定天然記念物「古秩父湾堆積層及び海棲哺乳類化石群」の指定を機に、通称「古秩父湾」が誕生してから今年で10周年を迎えるのを記念して、6月27日から特別展「古秩父湾」を開いている。古秩父湾の名称が誕生する前は、研究者や地層の重なり方によって、「秩父盆地層群」「赤平川層群」など別々の名前で細かく分かれて呼ばれており、地域全体をまとめて指す言葉がなかった。2016(平成28)年の文化財指定を機に、研究の進展に左右されない共通の通称として古秩父湾の名称が設定され、一般に浸透した。
周囲を山林に囲まれた現在の秩父地域だが、昔の人は山の中から巨大なサメの歯が産出する理由が分からず、海の動物の歯があるとは想像もしなかったため、「天狗(てんぐ)の爪石」と呼んで不思議な石として扱っていたことなども展示紹介している。今回の展示準備を行っている最中に、加藤さんと大村さんが同館に発掘したその足で北川さんの元を訪れたことから、発見当時の岩が付着した状態での公開が急きょ決まった。
今回の大型化石の発見を受け、同団体は化石発掘体験プログラムを強化している。子どもたちが地域の自然や地質の歴史を体験する機会として、複数のプログラムを展開する。秩父地域の小学生を対象とした「夏休み自由研究プログラムリバークリーンと化石発掘体験」は、荒川河川敷の清掃活動を共に行う環境学習。一般向けの「地質学発祥の地・和銅黒谷化石探求ツアー」も用意する。加藤さんによると、これまでの発掘プログラムでは何かしらの化石がほぼ毎回産出している。各ツアーでは参加後に同館への来館を促し、実際の体験と展示での学習を立体的に結びつける。
加藤さんは「私自身がメガロドンの歯を発見したため、地球の物語を伝える説得力が増した。山林に囲まれた場所から海の生きものの化石が出る驚きは、子どもたちにとって新鮮な発見になる。この体験を通じて生まれ育った地域に誇りを持ってもらい、地元に興味を持って、将来的に秩父に帰ってきたくなるような愛着を育んでほしい」と話す。北川さんは「秩父の展示を、ほぼ秩父にある資料だけで完結できるのは自慢できること。古秩父湾を題材に扱う上で当館以上に詳しい場所はない」と胸を張る。
開館時間は9時~16時30分(7~8月は17時まで)。月曜休館。入館料は一般=200円、高校生・大学生=100円、中学生以下=無料。