秩父の洋菓子店「ニューみとや」(秩父市野坂町)を4代目の萩原由曜(ゆよう)さんが継いで、3月で1年がたった。
由曜さんが戻ってきてから、定番のバナナケーキは2種類の味になった
同店は1925(大正14)年、初代の寅一さんが道生町に創業した。由曜さんは「高校3年生まで洋菓子店を継ぐ気はなかった。進路の相談をした際、父と母が菓子を1個ずつ売って自分を育ててくれた事に気がつき、料理と菓子の専門学校に入った」と振り返る。
由曜さんは専門学校を卒業後10年間、都内のホテルやスイーツ店、結婚式場で修業を積み、30歳になって秩父に戻って来た。「秩父に戻って来て1年。秩父の人の温かさを感じる。子どもの遊ぶ場所は少ないが、自然もあり周りの人も面倒を見てくれて、お客さまも子どもに優しく応じてくれるのがありがたい」と話す。
母の生代子さんは「自分が元気なうちに帰って来てくれてありがたいし、頼りにしている。私たちの時代と息子の時代で違う所もあり、たまに衝突するが本当に戻ってきてくれて良かった」と話す。
由曜さんが戻ってきてからは新商品開発や従来のメニューのアレンジにも力を入れている。秩父の日本酒「秩父錦」を使ったチョコレートや、秩父のカボスやユズを使ったパウンドケーキ、定番メニューの「バナナケーキ」の生クリームをチョコクリームに変えたものも増やした。「3月はホワイトデー以外にも、お彼岸や環境の変化の時期でもあるので、さまざまな用途に利用してもらいやすいようメニューを展開している」という。
由曜さんは「当店はおしゃれなパティスリーではなく、良くも悪くも『昔ながらの菓子店』。店の今までのメニューも大切にしながら、自分の10年間の経験を生かして、うちの職人が作るケーキに自分のエッセンスを入れていきたい」と意気込む。
同店は地元のコミュニティーFM「ちちぶエフエム」が企画した「世界に一つだけのパン&焼き菓子コンテスト」にも協力し、地元の学生が考案したレシピの商品化も行っている。「これからの秩父の街を考えると、インバウンドや観光、地域の子どもにどんなことができるかを考えて、いろいろな人に喜んでもらえる菓子を提供して地域の活性化にもつなげていきたい」と意気込みを見せる。
「当店は2025年に100年の節目を迎え、店の改装も検討している。今後、昔からの『ニューみとや』を大切にしながら、失敗を恐れずに気持ち新たに出発したい。将来的には生菓子や焼き菓子だけでなく、パンやキッシュ、総菜なども作って、海外のデリカテッセンのような店にして、朝から夜まで楽しめる店にしていきたい」とも。
営業時間は9時~18時。木曜定休。