「ちちぶ銘仙館」(秩父市熊木町、TEL 0494-21-2112)で2月5日から、企画展「秩父銘仙 花灯路(はなとうろ)」が開催される。同館で学んでいる捺染(なせん)講座受講生が創作した柄を染めた和紙を、行灯(あんどん)に貼りLEDライトをともして展示する。
秩父銘仙は、秩父地方で伝統的に作っている絹織物。歴史は古く、伝統を受け継ぎながら改良を重ね、1908(明治41)年に発明された「ほぐし織り」という技法により、色彩豊かな植物や花柄などの大柄の模様の織物を作るようになり、明治後期から昭和初期にかけて全国的な人気を誇った。当時は、東京女子高等師範学校(東京都文京区、現在のお茶の水女子大学)の制服にも採用された。
ちちぶ銘仙館は、秩父銘仙をはじめとする秩父織物の歴史上貴重な資料の展示や、伝統的な技術を伝承するための施設で、その一環として捺染講座を開いている。
銘仙を染める講座として「型彫り」から「染め」まで、最終的に着物1反分の絹糸を捺染し、受講生が創作した柄を染めるまでの工程を行う。同講座は昨年8月から開いており、秩父・所沢・東京から受講生13人が集まった。「市報の募集を見て受講した。いろいろな技術を先生から教えてもらった」と秩父市在住の受講生は話す。
指導は国が認定する「伝統工芸士」が複数名で行い、助手は秩父市の地域おこし協力隊の岩野倫代さんが担当する。「捺染は50年ほどで引退して、今は夫婦で少し染めている。ちちぶ銘仙館での指導を入れると60年になる」と棚橋さんは話す。
企画展で公開する行灯は竹編みと木枠の2種類があり、竹編みは直径30センチ・高さ100センチの筒型で5灯、木枠は40センチ角・高さ90センチの25灯を用意する。行灯の周りに生徒が創作した柄と、昔の原画を復刻して芝桜を意識した柄を多く入れたデザインを捺染した和紙を貼る。
「秩父銘仙は、型は型、機屋は織り、染めは捺染専門で、みんな分業だった。昔はいろいろな関連業社がたくさんあった。今は若い人でやる人がいないため、捺染専門もほとんど無くなり、型も私の家にしかない。私の父が彫り型の仕事をしていたので跡を継ぎ、伝統を残すために続けている。伝統技術を伝えるこの施設がないと無くなってしまう」 と伝統工芸士の斎藤弘さんは話す。
同館理事長の野澤功一さんは「実際、『ちちぶ銘仙館』の捺染体験をきっかけに秩父地域へ移り住んだ人がいる。多くの人、特に若い人たちが秩父銘仙に接して興味を持ってもらい、最終的に次世代の担い手が見つかれば。秩父地域の織物産業をいかに発展させていくかが、これからの課題」と話す。
開館時間は9時~16時。入館料は、大人=210円、小・中学生=100円。2月13日まで。