秩父フードクリエイツ(秩父市中町)の「ちちぶジビエ市場」が12月25日、稼働を始めた。鹿を中心とした害獣駆除の課題解決と地域経済の活性化を目指し、ジビエの活用を推進する。
同社社長の福島剛さんは秩父市出身。和風ダイニング「おだし料理と土鍋ごはんの店DAdA(ダダ)」(中町)や秩父郷土料理の店「食彩秩父じんじんばあ」(番場町)を経営し、現在も厨房に立って料理を振る舞っている。
コロナ禍の影響で店の営業が制限されたことをきっかけに、2021年からは鹿肉やイノシシ肉を使ったペットフード「ワンコメシ」「ニャンコメシ」を開発し、販売している。福島さんはこの取り組みを通じて、地元猟師との関係を築いていった。
秩父地域では毎年約2000頭の鹿が捕獲されているが、流通に乗らず廃棄される個体も多い。福島さんは「新工場を稼働することで、初年度は100頭以上の流通を目標とし、秩父のジビエを食肉として有効活用する。徐々に数を増やしていけたら」と話す。
福島さんは解体処理施設を造るため、広島、岡山、大分、熊本、福岡、愛媛、山梨、長野などの施設や、ジビエの食品加工施設にも足を運んだ。西日本ではイノシシやアナグマの被害が多いことを知り、その肉を流通している会社との関係もできたという。福島さんは「西日本からイノシシやアナグマを仕入れて、当工場で加熱加工して製品として販売もできる。関東でもイノシシやアナグマの獣害活用にも貢献できれば」と期待を込める。
同工場では秩父市猟友会と連携し、わなで捕獲した鹿のみを運び入れ、福島さんはもちろん、猟友会のメンバーも解体処理を担当する。持ち込んだ鹿は外の作業場で洗浄し、第1処理場でつるして皮をはぎ、第2処理場で内臓を取り出して精肉。その後、真空包装や急速冷凍による保存処理を行う。食肉処理業に加えて食肉製品製造業の資格を取得しており、加熱調理をした商品の流通も可能。ミートスライサー、ミンサー、レトルト釜、食品乾燥機などの設備を備え、ジャーキーや串焼き、レトルト製品などの加工食品も製造する。
「ジビエについて、秩父地域以外からの講演依頼も増えている。次の世代に、地元のジビエの活用方法をもっと幅広く教えられたら。人が食べる部分とペットフードにする部分、無駄がないように活用していければ」と福島さんは話す。