
秩父のコーヒースタンド「ちちぶコーヒー Roast & Research(ロースト・アンド・リサーチ)」(秩父市熊木町)が7月12日、秩父神社の夏の例大祭「川瀬祭」に着想を得た夏季限定水出しコーヒー「KAWASE(カワセ)」の販売を始めた。秩父地域の名水2種を使って味の違いを楽しむセットも取り扱う。
水出し専用のコーヒーバッグを500ミリリットルの水に一晩漬けて抽出する
川瀬祭は毎年7月19日・20日に行われる秩父神社の祭礼で、12月の「秩父夜祭」と対を成す行事。20日の大祭では、町内から選ばれた40人ほどが白木造りのみこしを担いだまま荒川の清流に入り、上流の斎場に「わっしょい!」の掛け声と共に到着すると、みこしにしぶきをあげながら水をかけ「みこし洗いの儀式」を行う。2021年には「秩父川瀬祭の川瀬と屋台の行事」として埼玉県の無形民俗文化財に指定されている。
今回販売を始めた「KAWASE」ブレンドは、川瀬祭の「川や水」をイメージして夏の暑さの中でもすっきりと洗い流すような味わいを目指し、店で焙煎(ばいせん)した豆を水出し用に調整したという。水出し専用のコーヒーバッグを500ミリリットルの水に一晩(12時間)漬けて、冷蔵庫に入れたまま抽出する。試作の過程で秩父の天然水を使ったところ、水の種類によって味わいが大きく異なることが分かり、飲み比べのセット商品としての展開につながった。
コーヒーバッグとセット販売する「秩父源流水」と「毘沙門水」は、水質の違いによって抽出されるコーヒーの味わいが全く異なる。同じ豆を使って、同じ冷蔵庫内で抽出しても、風味に明確な違いが現れる。秩父源流水で抽出したものは黒糖のようなコクと甘みがあり、舌にとろみを感じ、ミネラル分がより多く含まれる毘沙門水で抽出したものは、すっきりとした後味とメープルシロップを思わせる優しい甘みを感じるという。
液体に含まれる溶解成分の量を示す、水質評価などにも使われる一般的な指標「TDS(Total Dissolved Solids=総溶解固形物)」でコーヒー抽出液を測定すると両者の数値に差があり、味の違いが裏付された。
商品を企画したのは、秩父市荒川出身で国際コーヒー鑑定士の資格を持つ同店プロデューサーの福田歩惟さん。福田さんはコーヒーを学ぶ中で水の重要性を感じ、2023年には日本アクアソムリエ協会の「水のソムリエ」資格も取得した。福田さんは「水によって抽出される成分が異なる。同じ豆でも味に違いが出るという面白さを、ぜひ体験してもらいたい」と呼びかける。
首都圏の水源は、荒川と利根川からの水が約8割を占めると言われており、荒川は埼玉県の中央部を西から東に抜け、東京都の東側を流れて東京湾につながる。「秩父は荒川の源流域で、私自身、浦山ダムで水の大切さを伝える『水の大使』を務めたこともあり、水への意識は昔から強く持ってきた。日々口にしている水がどこから来ているのか、その違いや背景にも少し目を向けてもらえたら。水の奥深さを感じながら、コーヒーを味わってもらえたら」と福田さんは話す。
いずれも店頭とECサイトで取り扱う。価格は、コーヒーバッグ5つ入りで1,700円(EC=1,900円)、秩父源流水と毘沙門水のペットボトル2本がセットになった商品は1,940円(同=2,140円)。