
スギの苗木を植え、森林の循環利用を促す植樹イベントが6月28日、皆野町金沢の伐採跡地で行われた。
林業・製材業のウッディーコイケ(秩父市下影森)、大成建設、埼玉県の3者による「森林(もり)づくり協定」に基づいて開いた同イベント。大成建設が建設中の同社研究開発拠点の所在地となる幸手市、開催地の皆野町の地区住民ら約100人が参加した。
会場は、ウッディーコイケが伐採・製材を手がけ、「大成建設グループ次世代技術研究所」建設に活用中のスギの伐採跡地の一角。厳しい日差しの下、標高650メートルに時折吹き抜ける涼風を浴びながら、参加者は斜面にくわで穴を掘り、少花粉のスギの苗木500本を一本一本植え付けた。
同地区は、荒川水系が大半の秩父郡市の中で、秩父市吉田太田部と並んで利根川流域に属する特異な地区。今回の植林地周辺に源を発する小山川は、利根川に合流し幸手市の水資源となる。森林は木材の供給だけでなく、豊かな土壌を形成し、川の流量の安定化や水質浄化といった流域全体にわたる恩恵をもたらす。上流の皆野町と下流の幸手市は、利根川の流れを通じてつながっている。
開会式で幸手市の木村純夫市長は「全国植樹祭を通じて、林業事業者の山のスペシャリストとしての取り組みに感銘を受けた。さまざまな組織が参加して脱炭素社会に向けて交流を深めたい」とあいさつした。大成建設の長島一郎常務執行役員は「森林の循環が世代を超えて大河となり日本全体に拡大していくよう祈っている」と期待を込めた。
ウッディーコイケ山林部の山口芳正部長によると、プロの従事者は1人につき1日200本の苗木を植えるという。参加者は初めての植樹に手こずりながらも、手持ちの苗木を植えきり、「大変な作業な分、山一面を担うプロの仕事に感心した。成長の様子をまた見に来たい」と話した。
今まで、伐採跡地全体9ヘクタールに植え付けられた苗木は約3万本。今後5年ほどかけて毎年夏場、周りに茂る草を刈って苗木の成長を確保する「下刈り」を行う。この他、枯れてしまった苗木の場所に新たに植える「補植」、良好な成長を促す「枝打ち」「間伐」といった働きかけを行い、約50年の歳月で再び木材として利用されていく。