横瀬町在住の植物料理研究家YOSHIVEGGIE(ヨシベジ)さん(通称=ヨシさん)が8月26日、「なないろごはん」(芸術新聞社)を出版した。
ヨシさんは現在はモレスキンのノートにイラストなどを書き溜めている
ヨシさんは長崎県出身。20代の頃に自身の体調不良をきっかけに、友人の勧めでマクロビオティックを学び始めた。植物料理研究家としてオーストラリア、フランス、ニュージーランド、カンボジア、インドなど数多くの国の伝統料理を現地の農家に滞在して学んだ。マクロビだけでなく、和食をはじめとしたさまざまな国の料理をアレンジして取り入れた。東京都国立市内で飲食店の運営経験を経て、2017(平成29)年に横瀬町へ移住。2年半かけて古民家をDIYで改修しながら、2020年、カフェ&アトリエ「なないろごはん」をオープンした。
イラストは2009年ごろから、料理や好きな植物などをスケッチブックに描き始めた。「大好きな植物のスケッチをしていたところがスタートで、後は独学。メニューを組み立てたり、作った料理を記録したりするため」と、ヨシさんは話す。2021年1月、秩父市内の知人の店でイラストをポストカードとして販売していたところ、編集者の今井祐子さんの目に留まった。
今井さんとヨシさんが直接対面した際、それまでに書きためたイラストや日誌合わせて20冊以上を見せながら出版の相談がスタート。今井さんから企画会議を通って書籍化が決まったことを知らされたが、「どんなコンセプトにして出版するか」が定まらず、スムーズには進まなかったという。
昨年8月、ヨシさんの骨折など体調面でトラブルが続き、キッチンには立たず、若手料理家とのコラボレーションや、イベントや講座などを行ったりするスタイルに店は変わっていった。今年初め、「店と同じように、体験もできてワークシェアもできるような本を書けないか。レシピ本ではなく、自然に耳を澄まし、五感で調理する本にしたい」と考え始めたところ、今井さんから連絡が入り、出版に向けて一気に動き出した。
ヨシさんは「昨年は特に体に向き合う1年となったので、五感について実感がこもった本になった。当店だけでなく全国で交流が生まれ、食への感性、地球や季節のリズムと呼応しながら暮らしを紡げる人たちとの協働が生まれる教科書のような本になれば」と話す。「全てを家庭で作らなくても、メニューの考え方を頭に置くだけでも楽しくなるのでは。食材を見ただけで楽しくなる、絵本のように気軽に楽しんで」とも。
ヨシさんが料理や生きていくうえでの指針とする「多様性と調和」を軸にして書籍が構成されているという。季節の食材や味覚や彩の組み合わせ、五感の育て方や発酵食材や調味料を含めたレシピなどを収める。
仕様はA5判160ページ。価格は2,750円。