横瀬町の「道の駅果樹公園あしがくぼ」(横瀬町芦ヶ久保)が3月22日、オリジナル商品「借金なし大豆きなこ」を発売した。同商品は横瀬町産の秩父の在来種「借金なし大豆」のみを使っている。
同大豆は1990年代に八木原農園(横瀬)の八木原章雄さんが栽培を始め、地域で育てながら種を守り続けている。秩父の方言で「なす」は「返す」を意味しており、「借金なし大豆」は「借金があっても、この大豆を作れば収穫量が多く、借金が返せる」と言われたことからこの名が付いたとされる。
きなこの商品化に向けて中心となって動いたのは同町の石黒夢積さん。石黒さんは2017(平成29)年、地域おこし協力隊として横瀬町へ移住。耕作放棄地になっていた茶畑に興味を持ち、畑の再生をして栽培・収穫した茶葉を「和紅茶」へ加工し、横瀬紅茶の普及などに努めてきた。協力隊の任期終了後は集落支援員の活動を経て、昨年4月、同道の駅で勤務を始めた。
勤務を始めて間もなく、かねて付き合いのあった和菓子店「秩父中村屋」(秩父市東町)の中村雅夫さんから同大豆の栽培を勧められたという。中村さんは広域秩父産業振興のための連携組織「FIND CHICHIBU」の分科会の一つである「地域農産物活用分科会」の会長を務めており、同大豆の周知や販路拡大を進めている。
中村さんが経営する店では、同大豆で作ったみそを使ったみたらし団子やコーンフレークを販売。その他、秩父地域では「世界商事」(本町)のとんみそや、「清水家」(荒川上田野)のみそポテトチップ、「清心会」(山田)の借金なし味噌(みそ)などを、同大豆を使って商品化している。
石黒さんは同道の駅の仕事以外にも、以前より携わっている茶畑や紅茶作りや地域商社「ENgaWA」(横瀬)の業務も続けている。大豆栽培は清心会から譲ってもらった豆を使って、石黒さんの茶畑のすぐ近くの畑で行った。種まきや草取りはENgaWAのメンバーを含めて10人ほどで行い、収穫は企業のボランティア休暇制度を利用した社員らを含めて30人ほどが手伝ったという。
石黒さんは「収穫後の脱粒作業は機械を使うので3~4人で行った。中村さんに声をかけられて勢いのままに始めたが、大豆の仕事は一人ではできない。楽しみながら関わってくれた人たちから、『借金なし大豆』のおいしさを含めて広めて種をつないでいけたら」と話す。「まずは借金なし大豆本来の味を知ってもらえるように、きな粉として商品化できた。ゆくゆくはみそなども作りたいし、大豆栽培の作業体験や、みそや豆腐作りの体験にも展開していけたら」とも。
「この大豆はショ糖が多いので、大豆だけの味なのに『砂糖が入っている』と思う人もいるほど甘みがある。まずは、きな粉だけで食べてみてほしい。きな粉は餅にかけるイメージが強いが、アイスにENgaWAが販売しているグラノーラをかけて、さらにきな粉をかけて食べるのが一番のお勧め。ヨーグルトにかけたり、ホットミルクに入れたり、好みで好きなように食べてもらえたら」と話す。
価格は100グラム入り540円。「道の駅果樹公園あしがくぼ」「駅前食堂」などで扱う。