横瀬町で教育事業「タテノイト」を展開している、博士(理学)で保育士の舘野繁彦さんが1月14日、オンラインでチャリティー授業「ちっぽけツアー・地震編」を行った。約400家族が親子で参加した。
タテノイトは「子どもも大人も誰もが自分らしくいられる環境を整える」をテーマに、神奈川県川崎市出身の舘野繁彦さんと横瀬町出身の春香さん夫婦が2019年12月から「えほんカフェ」、2020年4月から認可外保育施設「森のようちえん」、2022年1月からフリースクール「NAZELAB」を運営している。共に以前は地球惑星科学の研究を専門に行い、東京工業大学・岡山大学・海洋研究開発機構で教員・研究員として勤め、2020年に保育士に転身した。
2020年11月からは定期的に子ども向けに「ちっぽけツアー」を開催しており、秩父の河川の地質を調査したり、地層から化石を探したり、天体観測をしたりするなどのリアルな体験ツアーや、オンラインで地球誕生や太陽系の惑星についての授業などを行ってきた。
1月1日に起きた能登半島地震をきっかけに、繁彦さんが「自分ができることで何かチャリティーができないかを考え、地震の正しい知識を届けたい」と企画した。「日本に暮らしている僕らだからこそ防災リテラシーを持ってほしいという気持ちもあり、古くから親しくしている地震学者で東京大学地球惑星科学専攻准教授の河合研志さんにもゲストとして声をかけ、集客をスタートした」と振り返る。
授業では「地震とは何なのか、なぜ地震が起きるのか」を中心に、子どもにも分かりやすいように解説した。昔の人は地震をどのように考えていたのかなど、地震にまつわる神話の話からスタート。地震発生のメカニズムに加え、地震と日本列島の成り立ちとの関係から今回の能登半島地震についてまでを解説し、過去の大きな地震と合わせて起きた火災・倒壊・津波などについても取り上げた。
春香さんは「漠然とした地震への不安を感じるだけではなく『海の近くに住んでいるから高台の場所や道順を調べておく』『住宅が密集しているから火事のリスクがあるかもしれない』などと自分が住んでいる地域で起きる可能性のある災害について、対策につながれば」と話す。
授業の後には河合さんを交えて質問タイムを設けた。参加者からは「地震予知はできるのか」「断層は地震を起こすなどの悪いことだけでなく、いいところはあるのか」などの質問が寄せられ、参加者の学びを深めた。
同授業のアーカイブは、ユーチューブ「タテノイト」チャンネルで無料公開している。繁彦さんは「授業は約1時間ほどなので気軽に見てほしい。より多くの人の学びになったり、家族で地震について話したり考えたりするきっかけにつながれば。子どもは今は理解しきれなくても、大人になったときの住まい選びや仕事で建造物を造るときなど、将来的に役に立てば」と話す。
参加者から集まった金額と寄付先は寄付後にサイトで公開予定。「『子ども』をキーワードに、直接的な支援につながる団体に寄付する」と繁彦さんは話す。