小鹿野町で12月9日・10日に「小鹿野の鉄砲祭り」が行われ、観光庁が取り組む「第2のふるさとづくりプロジェクト」の一環で駒場学園高校(東京都世田谷区)と淑徳高校(同板橋区)の生徒が参加した。実施主体は「秩父地域おもてなし観光公社」(秩父市熊木町)。
観光庁では国内交流市場の拡大に向けて、「何度も地域に通う旅、帰る旅」という新たな旅のスタイルの普及・定着を図る「第2のふるさとづくりプロジェクト」を推進している。何度も地域に通うことを促すための仕掛け作りや、滞在環境や移動環境の先進事例創出に取り組むモデル実証として、同公社の「年間300日以上祭りを開催! 地域の象徴『祭り』をハブにコミュニティをつなぐプロジェクト」が採択された。採択されたのは全国で18事業。
同公社の高島真理子さんは「『お気に入りの町』を見つけて何度も通い、旅と移住の間の新しいライフスタイルを楽しむのが『第2のふるさと』。秩父では年間300以上も行われる祭りという文化資源がある。地域外の方にも祭りに親しんでもらうために、今年度は都市部の学生向けのプログラム作りと、地域と都市部の学生をつなぐファシリテーターを養成して、『第2のふるさと』づくりを推進している」と話す。
プロジェクトの中で今年度参加した秩父の祭りは「長瀞船玉まつり」「吉田の龍勢」「小森歌舞伎」「秩父夜祭」「小鹿野鉄砲まつり」「秩父音頭まつり」。秩父音頭まつりは台風で中止になったが、Mahora稲穂山(皆野町皆野稲穂山)で秩父音頭を習って交流した。
参加した学生は「秩父の祭りを100年持続可能にするには」をテーマに、地域目線・観光客目線・自分目線での視点を意識してもらったという。「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」の3工程に分かれて、祭りの前後にも学習し、現地では祭りの参加者に「あなたにとって祭とはどんな存在?」などの質問をしていた。
鉄砲まつりには15人の生徒が申し込み、屋台・笠鉾を引く体験も行った。「ワッショイ」のかけ声に合わせて力強く参加し、笠鉾の屋根の上に乗った生徒もいた。笠鉾に乗った駒場学園高等学校の櫻井さんは「笠鉾に乗ってみる? と聞かれ、乗りたいと答えたら、気がついたら笠鉾に乗せてもらえた。部外者だからと批判されるかとも思ったが、温かく迎えてもらえてうれしかった」と話す。
同校の寺井さんは同プロジェクトで小鹿野町の小森歌舞にも参加しており、同町の須崎旅館で秩父銘仙の着付けをしてもらい、町を散策したこともあるという。「秩父の楽しかったことを話しているうちにまた秩父に行きたくなり、何度も秩父に足を運んでいる。秩父はさまざまな祭りをしているので飽きないし、その時に会った人に再び会いに行くのが楽しい。町の人も覚えてくれていることがうれしい」と話す。
13日には駒場学園高校に鉄砲祭に参加した生徒が集まり「旅アト」の学習会をワークショップ形式で実施した。当時の祭りや秩父の旅行を振り返って発表を行った。同校の高橋さんは「始めは秩父がどういう場所かも分かってなかったが、地元の活気ある人に触れて、想像以上の熱気を感じた。旅を通じて魅力を感じたので、この気持ちを大切にしていきたい」と話す。
高島さんは「地元のさまざまな人に出会うことは、生徒の日常にはない貴重な機会だと私自身も勉強になった。地域外からの来訪者との交流や手伝いなどを体験してもらえるような体制づくりを、当公社だけではなく祭りの関係者と地域事業者と少しずつ展開していきたい。生徒には地域に興味をもってもらい、繰り返し通ってもらえるような地域との関係づくりを期待したい」と話す。
学習会の最後に同校の高嶺さんが「秩父で食べたわらじカツやしゃくしな漬けなど、おいしいものが多かった。地元の人が祭りを楽しんでいるのを感じ、楽しかった。いつか社長になったら社員全員を社員旅行で秩父に連れて行って、秩父のスポンサーになりたい」と感想を話し、学習会を盛り上げた。