秩父市出身の植物学者・清水大典さんの細密詳細画を展示した「清水大典特別展」が現在、「ギャラリー武甲庵」(秩父市熊木町)で開催されている。
清水さんは1915(大正4)年、秩父市に生まれ、10代から動植物に興味を持ち、日々山に入り採集を続け独学で植物学を学んだ。1998(平成10)年に亡くなるまでの生涯にわたり、昆虫の成虫や幼虫に寄生する冬虫夏草の研究を続け、「日本冬虫夏草学会」の会長として多くの研究者を育てた。
山菜、キノコ、薬草の研究も手がけ、数多くの書籍を出版している。武甲山の石灰岩地質に特有なイワザクラを発見し、「チチブイワザクラ」(国の天然記念物)と命名したことでも知られる。
今回の展示では、清水さんが手がけた細密詳細画による「原色 冬虫夏草図鑑」(1994年出版)の原画300点のうち80点のほか、23歳の頃から交流が始まった植物学者・牧野富太郎さんからのはがきなどを展示する。
数多くの原画の中から展示作品の選定に関わった実行委員会事務局長の丸山瑛示さんは「水彩でこれだけの濃淡を出すのは非常に手間のかかる大変な作業。細かい線は、筆を自作して描いたと聞いている。なかなか選びきれなかったが、お客さまに見て楽しんでもらえるようなものをと選定した」と話す。
実行委員会の村田秀雄会長は「大典さんの父・武平さんは盆栽園を営み書家でもあった。兄の武甲さんは写真家。親子3人、今でいうマルチアーティストだった。今回、米沢市上杉博物館から作品を秩父に里帰りさせ、秩父市・秩父市教育委員会・秩父観光協会などの後援を受け展示する。これをきっかけに大典さんのことを、少しでも知っていただければ」と話す。
開館時間は10時~17時。入館無料。火曜休館(12月31日、1月1日・2日は休館)。来年1月15日まで。12月10日13時から、ギャラリートーク 清水武司「叔父大典を語る」を予定する。