秩父銘仙の織物工房「秩父織塾工房横山」(秩父郡長瀞町)が10月22日、「第70回秩父美術展」工芸部門で2度目の埼玉県知事賞を受賞した。同工房の生徒も、秩父市教育委員長賞を受賞した。
秩父織塾工房横山は1920(大正9)年創業。「銘仙を日常に」をモットーに、3代目となる現代表の横山大樹さんが、伝統を受け継ぎながらも新たな銘仙の開発に取り組んでいる。毎週金曜には明治時代の昔ながらの手織機で、機織り教室や織り・染め体験教室も開いている。
昨年10月には新技術「ヤナセ絣(かすり)」を開発。経糸・緯糸それぞれに違う柄をあしらうことで、奥行きのある絵画のような作風を実現した。
今回、同展に出品した作品「秩父銘仙 半併用絣」は、半併用絣(はんへいようがすり)の技術継承のために制作したもの。半併用絣は、メインとなる絣の部分が華やかに浮き出るのが特徴だという。秩父銘仙館の立ち上げにも関わった2代目の横山敬司さんの生前に、分業が主流だった銘仙作りの工程を自社内で一貫してできる設備を整え、半併用絣での制作を目指していたという。今回の展示では敬司さんの思いが形になった。
同工房の生徒である倉田公代さんが秩父市教育委員長賞を受賞した作品「秩父銘仙 まゆの里」は、織り子だった祖母と、養蚕と共に育った自身の幼少期の原風景を重ね合わせて作ったという。
大樹さんは「今回評価いただいた2作品はとても大変で、非常に手が込み、時間をかけて大切に織り上げたもの。このように評価いただけて大変うれしい。現代銘仙の美術的価値を高め、秩父銘仙の『伝統』と『新しさ』をかけ合わせアップデートしていくことで、いろいろな方に、より身近に活用いただけるような存在になることを目指したい」と意気込む。