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秩父で「サザエさんと行く植樹ツアー」 横浜から120人が電車で参加

横浜などから約120人と、サザエさん一家も参加した(写真提供=伊藤淳)

横浜などから約120人と、サザエさん一家も参加した(写真提供=伊藤淳)

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 「サザエさん 森へ行く 植樹ツアー in 秩父2023」が10月28日に開催され、約120人の参加者が植樹を行った。参加者は横浜と秩父をつなぐ列車「S-TRAIN」に乗車し、飯能からはサザエさんも参加した。

西武秩父駅前の広場では、北堀篤市長やポテくまくんが出迎えた

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 「サザエさん」は1946(昭和21)年から漫画化、1969(昭和44)年からはアニメ化され、海にまつわる名前の仲の良い一家を描き、国民的に長く愛されている。林野庁は4月、「サザエさん」の著作権を管理する長谷川町子美術館と協力体制を築き、サザエさん一家に「森林の環(もりのわ)応援団」を委嘱した。森林資源の持続的利用を推進するため「木を伐(き)って、使って、植えて、育てる」ことの理解を深める活動の一環。

 サザエさんの著者・長谷川町子さんの生誕100周年を機に、2020年に開館した「長谷川町子記念館」を「伊佐ホームズ」(東京都世田谷区)が設計・施工したことや、伊佐裕社長の出身地と長谷川さんが幼い頃過ごしたのが同じ福岡だったことなどの縁から、今回の企画が始まったという。伊佐ホームズと日本ウッドデザイン協会(東京都港区)が共同で主催した。

 伊佐社長は「35年前の創業当時、秩父札所を歩いて回ったことがある。その時に『大きな木の枝葉が枯れないのは根が枯れずにしっかりと張っているから』と聞いたことが印象に残っている。森が疲弊していると気付き、9年前から木を植え始めた」と振り返る。

 当日はS-TRAINの3両を貸し切り、参加者は「元町・中華街」「 横浜」「自由が丘」「渋谷」「所沢」いずれかの最寄駅から乗車。飯能駅からはサザエさんも乗車して西武秩父駅まで向かった。

 駅前では北堀篤市長や秩父市のイメージキャラクター「ポテくまくん」が出迎えた。出発式を行った後、参加者たちはバスで旧野外活動センター(秩父市山田)へ移動して植樹を行った。用意された400本の苗木はミズナラ、コナラ、クロモジ、サンショウ、クリ、アケビなど25種類ほど。日本の生態学者だった宮脇昭先生の提唱する「混植・密植型植樹」を基にしているという。

 植樹の監修を行い、同行していた東京農業大学の上原巌教授は「人に便利な同じ木だけが集まる土地は、特定の栄養分が取られて土が痩せてしまう。ナラ枯れなど虫害の被害にも遭いやすくなる。さまざまな木を密に植えることで木が競争し、土の栄養も偏らず、病気にもかかりにくい」と話す。

 作業の後、サザエさんの他にマスオさん、波平さん、フネさん、タラちゃんも登場し、サザエさん一家との写真撮影を行った。長谷川町子美術館の川口淳二館長は「サザエさんと山を訪れたのは恐らく初めて。海をきれいにするためには、海の上流の川、森、山がきれいでないといけない。日本一仲の良い家族で、海を連想させるサザエさん一家が海と山をつなげて、良い循環になれば」と話す。

 森の中で上原教授の講話を聞いた後、参加者全員で木立を見上げて森の中で横になったり、「森の赤ちゃん」を探すアクティビティーを行ったりした。参加者はそれぞれに芽を出している小さな苗を探し、上原教授に何の苗かを確認。スギ、コナラ、オオバアサガラ、アブラチャンやキノコやコケなどを見つけ、中でも特に元気な「森の赤ちゃん」を見つけた子どもには上原教授が出版した絵本を進呈した。

 イベントの最後には、伊佐ホームズが森林パートナーズとして取り組んでいる「金子製材」(横瀬町横瀬)を訪問。森から伐採した丸太から角材になるまでの工程を見学し、「木のプール」などにも使われているヒノキで作った卵型の「もりたま」の製造工程なども披露し、参加者へ土産として進呈した。

 日本ウッドデザイン協会の松崎裕之代表理事は「植樹や製材所の見学など、普段はなかなかできない学びがたくさんあった。木材は生活に必須なのに、都会に住むと森の恩恵を忘れがち。なかなか木が使われていないが、次世代に森をつなぐためにも、木材の利用を促して森林の手入れをしていく。活動を続けて、他の地域にもつなげていきたい」と話す。

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