秩父の吉田地域で10月8日、400年以上の歴史を持つ「秩父吉田の龍勢」が開催された。観客を入れての通常規模での開催は4年ぶり。
龍勢祭は毎年10月の第2日曜に椋神社(秩父市下吉田)の例大祭の「つけ祭」として行われる神事。松材を2つに割り、中をくり抜き、竹の箍(たが)をかけて作った火薬筒に黒色火薬を詰めた手作りの「ロケット」を打ち上げて奉納する。300メートルの高さまで白煙を吹き出しながら打ち上がるロケットを龍の姿になぞらえ「龍勢」と呼ぶ。2018(平成30)年には国重要無形民俗文化財にも指定されている。
龍勢の作り方は流派ごとに異なり、黒色火薬の調合や、「背負い物(しょいもの)」と呼ばれる落下傘や唐傘や花火などに、それぞれの流派の特色が現れる。今年は24の流派が計27本の龍勢を奉納した。龍勢師たちが一年かけて製作した龍勢が打ち上げられる度、観客からは大きな歓声と拍手が起こった。
特設コーナーでは、龍勢サポーターズが実物大の模型や写真を展示し詳しく解説。メンバーの小橋敬さんは観客に向け「龍勢は一回きりのものではなく、毎年みんな緊張でブルブル震えながら、気持ちを込めてやっている。毎回、泣きながら悔しがったり、手をたたいて小躍りして喜んだり…。人が作る祭り。お気に入りの流派を見つけて、ぜひ龍勢師に声をかけてほしい」と呼びかけた。
東京から観覧に訪れた駒場学園高校チアリーディング部「WITCHES」の横田莉央さんは「学校で『祭りを100年続けさせるには』というテーマで探究プログラムに取り組んでいる。実際に生で見ると迫力に圧倒される。学習で人手不足や高齢化という課題があることも知った。学校に戻ったら、自分たちにできることは何か、レポートにまとめる予定」と話していた。
同部の小松楓さんは「今年3月に一度秩父に来て、龍勢会館で龍勢について学んだ。さらに今日、龍勢サポーターズの説明を聞いたことで、より理解が深まった。『失敗しても成功しても龍勢は龍勢』という言葉に衝撃を受けた」、同部の後藤花菜さんは「この祭りの素晴らしさは現場に来ると分かる。SNSや配信なども使って、もっと多くの人に知ってもらい、地域外の人との関わりももっと増えていけば」と、それぞれ話す。