木材関連事業を手がける「ウッディーコイケ」(秩父市下影森)が5月12日、小鹿野町両神にある同社の伐採現場と下影森の工場で林業見学ツアーを行った。同社の取引先である都内の工務店の社員と同社社員合わせて約40人が参加した。
作業を担当する職人。急斜面での作業は難しく、埼玉ではこの1班しかできないという
当日は「両神温泉薬師の湯」(小鹿野町両神薄)に集合し、車で約30分かけて現場へ到着。同所は2019年の台風19号で崩落し、重機が崖から落ちるなど、復旧にも時間がかかり、同社の伐採現場の中でも特に厳しい現場だという。
参加者は職人によるワイヤロープを用いた「架線集材作業」により、伐採した木がどのように山から運び出されるかを見学した。架線集材作業とは、簡易的なロープウエーのようなシステムを森の中に作り、伐採した木をワイヤにつるして山の上から下ろし、1カ所に集めて搬出する作業のこと。 下ろされた木をプロセッサーという重機を使い、枝を落としながら同時に3~4メートルほどにカットする様子も併せて見学した。
同ツアーの取り組みは約10年前、工務店1社からスタートした。現在は工務店だけでなく、行政、地元の小学校や他地域の大学などの教育機関も参加し、その規模を広げている。
秩父の人工林は戦後70年を経過し伐採にふさわしい時期に来ているが、放置されているものも多く、土砂崩れや洪水、水源の悪化、生態系の崩壊、花粉症などの原因にもなっているという。
同社の小池啓友常務は「解決策として『切って→植えて→使って→育てる』という森林循環を健全化させるためにも、林業や木産業に日頃なじみのない人にも身近に感じてもらえるツアーを心がけている。人工林は人が手を加えて面倒を見ていかないと保つことができない。木を使うこと・木を切り出すことで山が活性化されていくので、もっと国産材を使ってほしい」と話す。
「2025年度に『秩父 ミューズパーク』(長留)で行われる全国植樹祭に向け、一般向けにも秩父の林業や木産業の実態を体感してもらうツアーを計画中。いずれは秩父にワーケーションやスタケーションに訪れる人向けに有料のツアーも行いたい」とも。