秩父市立吉田小学校(秩父市下吉田)の体育館で11月4日、3年生児童25人が授業の一環で「秩父吉田の龍勢祭」の技法を応用した落下傘作りを行った。同授業は今年で20年目。
秩父の吉田地域では毎年10月第2日曜に「秩父吉田の龍勢祭」を開いており、400年以上の歴史を持つ。同祭は椋神社(下吉田)の例大祭の「つけ祭」として行われる神事で、松や竹を使って「ロケット」を手作りし、打ち上げて奉納し、国重要無形民俗文化財にも指定されている。
同校では20年前から吉田龍勢保存会と協力し、「総合的な学習の時間」を使い小学3年生を対象に祭の伝統を引き継ぐ授業を行っている。25人の児童は6~7人ずつ4流派に分かれ、児童各自が棟梁(とうりょう)・脇棟梁・口上・太鼓・製造責任者いずれかの役割を担う。
10月から2月まで22時間の授業を使って、奉納者抽選会から龍勢の構想を練り、自分達で集めた材料を使ってミニ龍勢を組み立てる。口上の作文、口上や太鼓の練習、打ち上げまで実際の龍勢祭と同じように段階を踏み、児童が龍勢を学んでいく。
各流派、仕掛けが異なる龍勢をそれぞれに構想しているが、全流派共通して落下傘を仕掛けの一つとして取り入れる。その落下傘作りを学ぶために当日は「なるべく早く開いて、ゆっくり落ちてくる落下傘を作る」という目標の下、全員が落下傘作りに取り組んだ。
和紙を3回折り畳み、はさみで切って八角形を作って絵を描く。8つの角に穴を開け、糸を結びつけて重りを付けて完成する。吉田龍勢保存会の長谷川 清美さんが「うまく落下傘を作るコツは、説明をよく聞くこと」と児童たちに呼びかけたり、同保存会や龍勢サポーターズのメンバーが児童をサポートしたりしながら、全児童が落下傘作りに成功した。授業の最後には体育館2階から各児童が自身で落下傘を投げ、「どうやったら落下傘がうまく飛ぶか」を考えながら何度も挑戦していた。
長谷川さんは「児童が長い時間、集中力を切らさずに取り組んでいるのはすごいこと。主体性を持って児童自身に発表会に向けて気持ちを高めてもらえるように気をつけている。どうすればもっとうまく伝えられるか、20年目の今でも毎年工夫しながら、一緒に龍勢の勉強をさせてもらっている」と話す。
中山浩一校長は「毎年児童は2年生の時に3年生の発表を見ているので、『昨年先輩が作ったものを自分も作るんだ』という気持ちで授業に臨んでいる。目標がはっきりとしているので集中して取り組んでいる。2月の発表会が今から楽しみ」と期待を込める。