秩父の武甲山登山口、一の鳥居駐車場で4月1日、「武甲山観光トイレ」の供用が始まった。
水洗式のトイレで便座は暖房式になっている。各個室にはフィッティングボードがあり、着替えたり大きな荷物を置いたりすることもできる。足洗い場やベンチスペースもあり、登山届けの提出箱や掲示板も備え、パンフレットを置くなどして観光情報も発信する。冬季も閉鎖はせず、年間を通して利用できるようにする。
トイレは循環式の浄化システムになっているため川への排水は一切行わず、浄化した水を処理用の水として再利用する。浄化槽にはカキ殻や活性炭が入っており、汚水の浄化・脱臭・脱色などの役割を担う。手洗いは武甲山の川の水をポンプで引き上げているため飲用はできない。
武甲山は横瀬町と秩父市の境界に位置し、標高は1304メートル。西武鉄道の横瀬駅や芦ヶ久保駅まで電車で来る登山者も多い。
この登山口を管理する横瀬町は、登山者からの要望で5~6年ほど前から同駐車場に仮設トイレを設置していた。山頂のトイレは凍結による損傷を防ぐために冬季は閉鎖するほか、洗浄に雨水を使っているため、一部登山者がボランティアで麓の水を山頂まで運ぶなどしているが、利用者が多い時期には水が不足して閉鎖することもある。
仮設トイレの衛生管理や防犯の観点から常設のトイレを望む声が多く、3年ほど前には約5000人の署名が集まった。その後、横瀬町役場と登山愛好者で意見交換会を行うなどして、設備を検討していったという。
横瀬町役場の町田修一さんは「以前は駅や武甲山麓の企業や登山口のカフェのトイレを借りる登山者も多かったが、このトイレの設置で、今までより快適な登山ができるのでは」と話す。「今後は維持管理のための寄付を登山者にお願いすることも検討している。このきれいなトイレを維持するためにも、秩父地域のシンボルとなっている武甲山のためにも、その際は協力いただければ」とも。