皆野町にある秩父地域唯一のホンダカーディーラーで、「Honda Cars 秩父中央 皆野店」(皆野町皆野)と「Honda Cars 秩父中央 秩父店」(秩父市野坂町)を経営する「浅見商会」が2023年12月に創業70年を迎えました。
浅見商会の事業や今後の挑戦など、3代目・社長の浅見陽介さんと経理部長の浅見昌子さんに話を聞きました。
浅見商会は浅見昌子さんの父・武章さんが1953(昭和28)年12月24日、皆野町大浜で創業しました。当時は溶接作業や水道工事などを請け負っていました。バイクや農機具、後に自動車を取り扱い始め、スバル、日産、ホンダ…と、商売を拡大。徐々に自動車の販売に業務を絞っていき、現在ではホンダ車の取り扱いの他、自社の整備工場で車検点検整備や一般整備も行っています。
以前はホンダのカーディーラーは「HONDA PRIMO(プリモ)」「HONDA VERNO(ベルノ)」「HONDA CLIO(クリオ)」の3つに分かれており、秩父にも複数の店がありました。2006(平成18)年7月、カーディーラーが「Honda Cars」に統一され、浅見商会が経営する2店のみが秩父に残りました。昌子さんの夫・雅夫さんが社長を継ぎ、昌子さんは経理を担当。その後、陽介さんへと継承されます。
現在社長を務める陽介さんは昌子さんの長男。陽介さんは大学卒業後に「ホンダ販売武蔵野」へ就職。当時は就職氷河期で、特にやりたいことが思いつかなかったものの、陽介さんが以前から車やバイクが好きだったことからホンダの店を探し、就職面接を受けたそうです。
陽介 当時は家業を継ぐつもりは、全くありませんでした。車業界以外の就職説明会や面接も参加して、ITや先物取引などの業界も見ていましたが、しっくりこなかったです。車やバイクは好きですが整備などではなく、「販売がやりたい」と思って面接を受けました。
面接を受けに行き、偶然にも以前父が修行していた頃の上司が社長の側近の方でした。「秩父に浅見商会って会社があるよね?」と、気付かれて驚いていましたね(笑) 自分もその方に仕事を習いました。とても厳しく営業のノウハウをたたき込んで鍛えてもらい、とても感謝しています。
陽介 仕事のやり方をつかむのに3年ほどかかりました。自動車は安い買い物ではないので、すぐには売れません。目標にする上司や先輩の商談を盗み見て、全く同じにできるわけではないので、自分なりに模索しました。自分が自動車を販売したお客さまが、初めて車検で戻ってくるまで3年かかります。「自分のお客さま」になった方には声がかけやすいのですが、戻ってくるまでが長い。時間はかかりましたが、経験を積んで知識や話の引き出しが増えて次第に売れるようになりました。
陽介 吉祥寺と上石神井の店で5年ほど勤務しました。2006年にホンダのカーディーラーが統合されることになり、事業が大きく変わるタイミングだと思い、秩父へ帰郷して父や母と一緒に勤めることを決意しました。
2006年に秩父へ帰郷後、陽介さんは浅見商会の営業からスタートし、2020年に社長に就任しました。
陽介 東京と秩父では営業のスタイルが違いますね。秩父はお客さまとの距離がとても近い地域だと感じます。東京は秩父に比べるとあっさりしている印象です。祖父の時代は生活や商売に密着する農機具を取り扱っていましたし、その頃から3世代にわたって付き合いのあるお客さまもいらっしゃいます。自分は秩父で育ったので、幼い頃の自分を知っているお客さまもいらっしゃいますし、長く商売をしている会社を継いだことを実感します。
陽介 人と人とのつながりが、商売の基本だと強く思います。格好をつけて仕事しても仕方がないですし、お茶飲みに遊びに来るような、敷居の低いフレンドリーなお付き合いをしていただくことも多いです。お客さまには、何かあったらすぐに相談していただきやすい、電話や来店しやすい近さを心がけています。お客さまと仲が良くて距離が近いことは、他地域から来たスタッフも感じているようです。
陽介 飯能や熊谷から通いの方もいますし、コロナ禍を境に久喜や志木や越生から移住してきたスタッフもいます。「採用してもらえれば移住します」という方もいて、ウェブ広告を使った募集などは特に他地域からの応募がありますね。秩父にキャンプや観光で訪れていて「秩父にいつか住めたらいいな」と思っていたスタッフなどもいるので秩父の地域性を感じます。
移住したスタッフの一人、営業の本田真美さんに話を聞きました。
本田 少し前、義理の両親が富士見市から小鹿野町に移住していて、私たちにも近くに住んでほしいとのことだったので家族で秩父に移住しました。その年、何も知らずに12月3日に秩父に来てしまったんです。秩父の人からすると12月3日は「秩父夜祭の日」で、特別な日ですよね(笑) 引っ越してきた場所が秩父神社や市役所からは離れていたので、無事に引っ越しができました。
本田 いろいろな仕事を経験してきましたが、家でできる内職や工場でも働きました。パチンコの会社で14年ほど働いていたので接客業には慣れていましたが、自動車を扱う仕事は初めてです。ハローワークで募集要項を見て応募して、働き始めてからこの3月でちょうど1年になりました。
陽介 本田さんを採用した理由は、柔軟性やバイタリティーがあってハキハキしているところですね。営業は頭の回転や気が利くことなども重要なので、そういった点でも良い人が採用できたなと思っています。
本田 以前住んでいた富士見市より夜道が暗く、コンビニが少ないと思いますが、だいぶ慣れました。秩父は立地的にも交通の便も恵まれていて、1時間30分もあれば前の家に戻れます。まだ、長男が富士見市で暮らしているのですが、遠いと思ったことはないですね。
お客さまの秩父弁や独特のイントネーションが分からずに聞き返すこともありますが、以前よりも分かるようになってきました。どこの店がおいしいとかの情報や秩父の歴史などをお客さまに教えていただくことも多いです。
本田 勤め始めてから保険商品を販売する資格や、中古自動車査定士の資格を取得しました。勉強して資格に受かったことで、業務で行っていた知識が身についてきたように感じます。中古自動車査定士の資格がないと、中古車の下取り商談ができないので、受かって良かったです。
「車が欲しい人」「車が必要な人」は来店したら買ってくださいます。そういった方々に売れないのは、私の技量不足です。先輩や社長も営業のアドバイスをくれますが、話の流れなどはその時々なので、知識や経験を増やしてお客さまに提案していきたいですね。
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浅見商会の最近の事業についてもお聞きしました。
陽介 2018(平成30)年に皆野店併設の新工場を作りました。以前は大浜地区に車検を専門に行う工場があって、秩父店も皆野店もそこで車検をしていましたが、どちらの店からも距離があるのであまり効率が良くなかったです。現在は大浜地区の工場は閉鎖して、皆野店の工場に集約しています。いずれは秩父店にも併設の工場が作れないかと検討中です。
陽介 コロナ禍でメーカーが新車を製造できなかったり、納期に時間がかかったりすることが増えました。それをきっかけに、2022年にホンダ認定中古車を取り扱う「U-select店」として中古車事業をスタートしました。
中古車と新車ではお客さまの層や販売方法も異なります。新車と中古車の両方を提案できるようになったので、お客さまの車の使い方や予算に合わせて、提案の幅が広がりました。秩父は都市部に比べれば空き地も多く、中古車を展示するスペースも取りやすいことが利点ですね。
陽介 事業を拡大しているので、やはり人手が欲しいですね。特に車の販売営業のスタッフを募集しているので、秩父の方だけでなく通える範囲の方や移住者なども挑戦していただければと思います。秩父地域1市4町全てのホンダ車の取引を担う責任がありますね。
昌子 創業から知っているわけではありませんが、70年はあっという間でした。秩父地域でホンダのカーディーラーは浅見商会のみで本田技研より「秩父のホンダをしっかり守ってください」とも言われているので、次の80年に向けて取り組んでいきたいです。
陽介 地域とのつながりも深く、卒業したJC(秩父青年会議所)や、現在所属している皆野商工会、法人会、消防団などのメンバーにもお世話になっています。70年続く会社の3代目というところでプレッシャーはありますが、やりたいことはたくさんあるので、風呂敷を広げすぎず、今までの歴史に恥じないように仕事をしていきたいと思います。
皆野店
秩父郡皆野町皆野778-5
TEL:0494-62-2131
営業時間:10時~18時30分
定休日:第1・2・3火曜、水曜
秩父店
秩父市野坂町1-13-22
TEL:0494-22-1886
営業時間:10時~18時30分
定休日:第1・2・3火曜、水曜
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