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120年ぶりに秩父銘仙の新技術開発 アート性を高め秩父銘仙の継承目指す

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 秩父銘仙の織物工房である「秩父織塾工房横山」(秩父郡長瀞町)が新技術「ヤナセ絣(がすり)」を開発し、昨年10月に特許を出願した。秩父銘仙に関わる特許技術の申請は、1903(明治36)年に坂本宗太郎が縦糸に捺染を用いる技術で特許技術取得して以来だという。

 秩父織塾工房横山は1920(大正9)年創業で、現代表の横山大樹さんが3代目となる。「銘仙を日常に」をモットーに、伝統を受け継ぎながらも新たな銘仙の開発に取り組んでいる。分業が主流となっている銘仙作りの工程を、自社内で一貫して生産できる設備を持つ。

 秩父銘仙は、養糸業が盛んだった秩父地域で、絹糸から作られ庶民の普段着として定着していた「太織(ふとおり)」が発展したもの。縦糸に柄を染色し織り上げる「捺染(なっせん)」という手法の開発により、明治中期から昭和初期にかけて庶民のおしゃれ着として広く普及した。

 新技術「ヤナセ絣」は、経糸・緯糸それぞれに違う柄をあしらうことによって、奥行きのある絵画のような作風になるのが特徴。2019年2月にニューヨークで開催された展示会「MAN/WOMAN WOMAN New York AW19」への出展する際、インクジェットを用いて経糸・緯糸で柄の違う作品を作ったのがきっかけだったという。その際に発案した「経糸・緯糸それぞれに違う柄」というアイデアを技術化した。

 経糸は柄、緯糸は無地で染められる従来の秩父銘仙や、経糸・緯糸いずれも同じ柄で染められる五大銘仙のひとつ「伊勢崎銘仙」で用いられる手法「併用絣(へいようがすり)」と比べて、ヤナセ絣では、経糸・緯糸それぞれ違う柄を重ねるため、角度によって違う柄が浮き出る立体感や絹独特の光沢感、 光の角度や補色によって生まれる玉虫効果がより強く表現される。経糸・緯糸の柄の組み合わせをどう表現するか、繊細な判断が求められるという。

 横山さんは「秩父銘仙の価値を高めることが、銘仙づくりの現場に携わる人が増えることにつながる。その結果、秩父銘仙の技術の継承ができるはず」と話す。

今後、自社で生産が完結できる強みを生かして、織物という領域を超えた芸術的・アート的価値の高い商品開発に挑んでいくという。
 

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