
秩父のコーヒースタンド「ちちぶコーヒー Roast & Research(ロースト・アンド・リサーチ)」(秩父市熊木町)が10月11日、秩父ワイン(小鹿野町両神薄)の醸造に使われたオークだるで熟成させたコーヒー豆を使った「バレルエイジドコーヒー」を発売する。焙煎(ばいせん)した豆は、瓶入りと1杯取りのコーヒーバッグの2種で展開し、初回ロットを数量限定で販売する。
ワインの香りを豆に均一に移すため、熟成中のたるを定期的に回転させる
今回使ったたるは、小鹿野町にある秩父ワインの自社畑「唐沢(KARASAWA)」で収穫したブドウ品種「メルロ」を熟成するために使われたもの。複数のワインコンクールでも受賞歴のある赤ワインの醸造に使われていた。
商品化のきっかけは、小鹿野町の「地域商社おがの」(両神薄)が秩父ワインから空きだるを譲り受けたことだった。たるの活用方法を模索する中で地域内のネットワークがつながり、ちちぶコーヒーに声がかかった。
ラベルは、横瀬町のデザイン会社「malme.design(マルメデザイン)」の吉田武志さんが手がけた。吉田さんは、秩父で2020年からウイスキーだるで熟成させたバレルエイジドコーヒーを販売している「WAPLUS COFFEE(ワプラスコーヒー)」(秩父市上町)の商品開発にも携わった経験があり、ラベルデザインを手がけながら製造面でも情報提供したという。
バレルエイジドコーヒーは、ワインの香りを豆に均一に移すため、熟成中のたるを定期的に回転させて豆を攪拌(かくはん)する必要がある。生豆を詰めたたるは非常に重く、人力で回すのは容易ではない。吉田さんから「ワプラスコーヒーに専用の回転台がある」と聞いた福田さん夫婦は店主の島田淳子さんに相談し、使っていない台を借り受けた。店主の福田健吾さんは「ワプラスの焙煎所やたるの保管庫も見学させてもらい、とてもありがたかった」と振り返る。
豆の選定にはブレンド用の豆やシングルオリジンの豆など7種類ほどを試した。香りのバランスや豆の個性を考慮し、最終的にエルサルバドル産の豆を採用。ワインと豆の香りを損なわず、かつ飲みやすい味わいに仕上げたという。豆の熟成状況や香りは、国際コーヒー鑑定士や水のソムリエなどの資格を持つ同店の福田歩惟さんが見極め、1カ月ほどの熟成期間を設けた。
健吾さんは「コーヒーは高温では酸味が立ち、温度が下がるにつれ甘みが引き立つ。この豆は急冷させると、ワインの香りがより際立つ。ワイングラスで飲むと雰囲気も含めて楽しめるのでは。ホットで飲んだりカフェオレにしたり、食事に合わせたりして試してほしい。今回は赤ワインのたるを使ったが、今後は白ワインのたるでも試してみたい。紅白セットとして贈答品にできたら」とアイデアを膨らませる。
価格は、瓶入りの豆120グラム=4,500円、ドリップバッグ12グラム=450円、ドリップバッグ5個入り=2,500円。瓶は100本限定で、完売後は袋に入れた状態での販売に切り替える。ドリップバッグは同店のほか、「じばさん商店」(宮側町)、「祭の湯」(野坂町)でも取り扱う予定。