小鹿野町100%出資の「地域商社おがの」(小鹿野町小鹿野)が、次世代に豊かな森を残すことを目指し自然林の保全に取り組んでおり、同町のヒノキの端材を活用して「森のタンブラー」を製作した。
同町には人工林と天然林が共存しているが、人工林は放置し続けると土砂崩れなどのリスクを伴うため、伐採などの手入れが必要となる。伐採後に出るヒノキの端材はこれまで燃料や堆肥に使われるか廃棄されることが多かったという。同社は、この未利用材を活用し、森林資源の大切さを伝えるため同タンブラー製作に着手した。プロジェクトの収益の一部は豊かな天然林を未来に残す「両神山ナショナルトラスト事業」に寄付し、保全活動に役立てられる。
同タンブラーは植物原料55%で作られており、容量は475ミリリットル、重量は50グラムと、ポリプロピレンを配合することで薄く仕上げることに成功した。プロジェクトのきっかけは、同社と包括連携協定を結ぶ武蔵野銀行の支援だったという。同行がタンブラー製造元のアサヒユウアス(東京都墨田区)や、デザインを担当する企業などと橋渡しを行った。材料の手配は地元の企業が協力。ヒノキの端材を地元の土木業者が運搬し、材料の粉砕は地元の工場が引き受けた。
同社は昨年12月20日、「森のタンブラー」などをリターンとしたクラウドファンディング(CF)を「IBUSHIGIN」で始めた。同町地域商社推進室の山下雄一さんは「端材を活用することで、森林資源の大切さに気づいてもらえたら。このタンブラーを通じて、当たり前のように水道をひねれば出てくる水の源流が小鹿野町や秩父地域にあること、次世代に自然を残す重要性を伝えられたら」と話す。
リターンには、同町の湧き水「毘沙門水」とタンブラーを組み合わせたセットや、入浴券や宿泊券とのセットなどを用意する。国の地域活性化起業人制度を活用し、武蔵野銀行から派遣されている駒井理さんは「秩父黄金かぼす果汁と小鹿野町産蜂蜜のセットを使って作る『黄金かぼすジュース』のレシピは試行錯誤して考案し、子どもや家族にも味見をしてもらいながら調整した自信作。タンブラーに注いで、小鹿野町の味を楽しんでいただければ」と話す。
同タンブラーは、2025年5月に同町と秩父市にまたがる公園「秩父ミューズパーク」を主会場に開催される「第75回 全国植樹祭」の記念品としても採用される予定。CFは3月19日まで。