2025年3月オープン予定の「久遠チョコレート秩父店」(皆野町皆野)で12月16日~20日、職員向けの見学会が開かれた。同店を経営するのは医療法人彩清会清水病院(皆野)。準備中の店の内覧を通じて、障がい者の就労継続支援B型事業所としての新たな取り組みを共有する機会となった。
当初は11月末のオープンを予定していたが、オープンを目前にしてオープン延期を決めた。繁忙期となるクリスマスやバレンタインを避け、準備をより万全に整えることで、スタッフが落ち着いた状態で仕事ができるようにとの配慮からだという。
同法人は医療、介護の事業も手がけており、2019年には「児童発達支援」「放課後等デイサービス」などの障がい福祉の事業も始めた。最初に取り組んだのは農業で、収穫した作物を加工販売する6次産業を目指した。昨年秋からは収穫したサツマイモを使って焼き芋販売も行い、多い日には1日140本ほどが売れるという。
同法人理事長の清水大貴さんは以前から、障がい者に支払う作業工賃や就職率の低さに問題を感じ、何か良い取り組みはないかと模索していた。各地を視察し調べていく中で、全国に約40店を展開する「久遠チョコレート」代表の夏目浩次さんを知った。同ブランドは、障がいを抱えるスタッフがチョコレート製造に携わり、報酬は全国の障がい者平均の約10倍にもなるという。同ブランドの取り組みは注目を集め、「チョコレートな人々」というドキュメンタリー映画にもなっている。
清水さんは「農業を始めた時も農業をやりたかったわけではない。障がいを持って生まれても、経済的にも精神的にも豊かに暮らせる社会を実現したい」と話す。「チョコレートの製造・販売は作業を細分化しやすく、障がい者と一緒に働きやすい。ドライフルーツなどの材料を刻む、商品を袋に入れる、袋をシーリングする、シールを貼る、箱を組み立てるなど分担を決めて多様な人が関われる。ロスが少ないのも特徴で、切った端を加工して別の商品を作ったり、溶かして作り直したりもできる」とも。
同店では現在、スタッフの三友さんと嶌田さんが店内製造できる商品を充実させるため、日々工夫を重ねている。三友さんは、以前は清水病院で看護主任を務めていたが、新しい挑戦を決意し転身した。三友さんは「以前、小児集中治療や小児科勤務をしていた時、障がいを持って生まれたり入退院を繰り返したりする子どもと、その家族の力になりたいと思っていた。チョコレートを通じて、みんなが笑顔になれる瞬間を作りたい」と話す。
嶌田さんは郵便局などでの勤務経験を生かし、接客や店の飾り付けなどにも取り組む。障がいを持つ子どもの親でもあり、子どもが成人して生活環境が変わったことで自分の時間が取れるようになり、未経験の職種に挑戦したという。嶌田さんは「久遠チョコレートは、障がい者の家族が応援しやすい環境が整っている。作ったものを食べられて、売れていく様子も見られるし、買ったものを誰かに手土産として持っていける。『自立していく子どもの姿が見られるのは、何にも代えがたい』という親の気持ちが、私はよく分かる」と期待を込める。
清水さんは「飲食店の経験がなくても、新しく挑戦したい人や、この事業に共感していただける人と一緒に未来を作りたい」と呼びかける。店内ではチョコレートと焼き菓子の販売のほか、チョコレートドリンク、コーヒーなども提供予定。イートインスペースも設ける。
オープン日は来年3月22日を予定する。