各地でクマの目撃情報が相次ぐ中、横瀬町の花咲山公園(横瀬町横瀬)で12月15日、町が「城北ドローンオフィス」(東京都板橋区)と連携し、ドローンと赤外線カメラを使ったクマ出没リスク調査が行われた。
調査は、11月6日にクマの目撃情報が確認され、町から安全確保のため一部区間で通行を控えるように呼びかけている同園で行った。同町で町民の不安が広がっていることを背景に、来年度以降の害獣対策に向けた情報収集と技術検証を目的に行った。
同社は、町が進める官民連携プラットフォーム「よこらぼ」で防災分野の提案として7月に採択された。当初は防災の観点や、ドローン講座の開催などの活動を想定していたが、町内でクマの目撃情報が増えている状況を受け、まずは緊急的に獣害対策に活用できないかを検証することにした。
当日、現場には消防署員も参加し、山林火災が発生した場合のドローンの活用を想定して見学した。
今回の調査ではドローン2機を使用。一機は赤外線カメラを搭載し、もう一機は赤外線カメラとAIを搭載している。AIは煙や炎、車、人を判別して探知する機能を持つが、現状では獣を判別する機能はない。このため、獣がどのような熱源として映るのか、人との違いをどのように判断できるのかを検証した。
日中は地表が温まることで、動く熱源の判別が難しくなる課題があるという。地表温度が下がる夜間の調査が有効とされており、事前に航路や高度を設定した自動飛行プログラムを組んだ夜間調査も今後、検討する。今回は安全面を考慮し、目視で確認しながらの飛行を重視した。
搭載したカメラの映像は手元のディスプレーで確認しながら飛行できるが、一般的には撮影後に映像を解析に回すという。翌16日午前には同町南沢地区の町有林でも追加調査を行った。2日間の調査ではスタッフ以外の熱源は確認できず、スタッフ3人の熱源のみ確認したという。
城北ドローンオフィスの宮本拓社長は「弊社は都内にあり、会社の近くには山林がなく、赤外線カメラで熱源がどのように見えるのかを実際の環境で検証したかった。AIが搭載されたドローンを使うことで理論上では熱源の種類や、炎と人が同時に判別できる」と話す。
横瀬町振興課で有害鳥獣対策を担当する小菅旭央さんは「今回の調査を通じて、獣害対策だけでなく、林野火災などの防災分野での活用可能性も含めて検証を進めていきたい」と話す。