JICA海外協力隊の派遣前国内実習「グローカルプログラム」第4期生の最終報告会が12月15日、横瀬町の「Area898」(横瀬町横瀬)で行われた。会場には約50人が集まり、実習生の池原結花さんと小嶋準成さんが10月6日から約75日間にわたる町内での活動と、今後の海外派遣に向けた抱負を発表した。
同プログラムは、海外協力隊として派遣される前に、日本の地方自治体などで実習を行い、現場での関係づくりや課題解決の経験を積むことを目的に実施している。横瀬町ではこれまで継続的に実習生を受け入れ、今回で累計9人となる。受け入れ先の地域商社「ENgaWA」の福手直人さんは「75日間、2人に活動してもらい、現場にも良い刺激をもらった。気づきや学びを共有し、2人の門出の一歩になれば」とあいさつした。
池原さんは沖縄出身。派遣先のペルーでは日系人コミュニティーと関わる活動を予定しており、その準備として「和を学ぶ」ことをテーマに、書道や茶道など町内の集まりに参加した。書道道具が手元になく、身近な物で代用するなど工夫を重ね、現地での活動も想定したという。池原さんは「派遣国でも限られた環境で活動する際に生かせる経験になった」と振り返った。
その他、地域の食材を生かした弁当やおにぎりを、「チャレンジキッチンENgaWA」でのテスト販売を経て横瀬駅前で販売した。利用客の需要や観光客数など想定外の点もあったという。質疑応答では、日本の「BENTO(弁当)」文化が海外では新鮮に受け取られる可能性も話題に上がった。
小嶋さんは京都出身。タンザニアの中学校で体育を担当する予定で、横瀬小学校の体育の補助や子どもたちの見守りなどを行った。学校現場や子どもたちとの関係づくりをしていき、小学校3~6年の体育の授業に携わる機会につながり、「体を温める運動」をテーマに世界の遊びやタンザニアのあいさつを取り入れた内容を実践した。「体を動かす体育だからこそ、子どもたちの積極的な反応が見られた。タンザニアでも日本の遊びやあいさつを取り入れるのも良いかもしれない」と成果を話す。
2人は自身の分野だけに限らず、農作業や地域行事にも積極的に参加した。小嶋さんは「1人で1600本のタマネギ苗を植えるなど農業の現場を体験し、高齢化や人手不足といった地域課題も実感した」と振り返る。
2人は「町民や職員との距離の近さ」を「学び」として挙げた。池原さんは「オープンマインドで、自分で楽しみごとを作り出す姿勢があり、多世代と自然に関われた。この経験をペルーでも生かしたい」、小嶋さんは「よそ者という感覚を忘れないようにしたい。人の話をよく聞き、関係を築く姿勢を忘れずに活動したい。地元に帰っても、その意識を持ち続けたい」と、それぞれ話した。
富田能成町長は「2人はチャレンジキッチンENgaWAや学校現場など、横瀬町のフィールドをとてもうまく使ってくれた。横瀬町の受け入れ体制の手応えも感じた。海外協力隊はこれまで多くの先輩たちが各地で良い活動を続け、現地との信頼関係を積み重ねてきた。2人にも、自身の個性を生かしながら、その流れをつないでほしい」、JICAの内山貴之次長は「独りよがりにならず、現地の声を聞くことが大切。この後の訓練や、海外に渡ってからも日本や地元や横瀬町のことを伝えていってほしい。多くの人たちとつながりを広げてほしい」と、それぞれエールを送った。