秩父地域の観光栗園「高野くり園」(秩父市寺尾、TEL 0494-23-9276)が9月13日、開園した。
同園は、秩父観光農林業協会に登録された栗拾いが楽しめる農園としては唯一の農園で、1975(昭和50)年に創業、今年で46年目になる。秩父地域には、かつて観光栗園が7カ所あり、シーズンには合同で開園式が行われ地域を盛り上げようとしていた時期もあったが、年ごとに高齢化していく生産者の後継者が居なかったことから、今ではこの「高野くり園」が唯一残っている。
栗の収穫時期は9月~10月中旬と短く、年間を通しての観光農園を運営していく上ではあまりにも短い営業期間になってしまい、その事が経営を難しくしている。中山間部が多い秩父地域で、栗を生産している農家は今でもあるが、そのほとんどが市場や地元の直売所などで販売している。
同園を経営する高野美智子さんは「高野くり園」が残った要因として、その立地にあると話す。秩父市街地と荒川により隔てられているこの場所は、かつては行き来するのに渡し舟を使っていたという時代もあったが、高野さんが桑畑を栗畑に変えた頃には既に武之鼻橋や佐久良橋などができていて、秩父市郊外から車や徒歩で行き来することができた。さらに、1994(平成6)年には全長530メートルの秩父公園橋が完成し、秩父鉄道の秩父駅から車で数分の場所になった。栗畑が自宅と隣接しているため管理が比較的楽にできる点も要因の一つに挙げる。
およそ50アールの敷地に100本近くの栗の木が植えられているが、栗の種類は接ぎ木などを繰り返してきているため、はっきりとした本数は分からないという。
高野さんは、「市内で事務職をしていて、農具の名前も知らないでこの場所に嫁ぐことになった。農家の仕事には不安があったが、ここまでやってこられた。これからも主人と育てた栗畑を大事に残していきたい。今年も良い栗ができた」と話す。
同園の入園料(300円)と栗の値段(1キロ当たり700円)は開園以来、変わっていない。10月中旬くらいまで開園できる見込みだが、訪れる際は電話で問い合わせしてほしいという。