
秩父ミューズパークで5月25日に開催される「第75回全国植樹祭」を前に、小鹿野町藤倉で5月10日、地元団体「上郷花の会」が主催する植樹会が開かれた。当日は、ハナモモ100本、ツツジ30本を植樹。地元住民のほか、「おがの地域ネットワーク」加盟団体や「おがの発みんなの学校」のメンバー、明治大学生、森真太郎町長や同町職員、県議会議員、秩父農林振興センターの職員など、合わせて約50人が参加した。
長沢・中平・遠嶽・太駄・宮沢・森戸・矢久の7つの集落から成る上郷地区。3月31日時点で人口70人、世帯数44軒、高齢化率69%、独居の高齢者も多い。上郷地区の全世帯が加入する組織として、2021年5月に発足した同会。藤倉川沿いにある荒廃地の人工林を伐採し、これまでにモミジやサクラなど3000本以上の苗木を植樹している。全国植樹祭には同町の推薦を受け、一般招待者として参列する。
発足の背景には、同地区で2016(平成28)年に始めた「上郷健交サロン」の存在がある。サロンは「健康づくり」「交流」を柱とし、最寄りのセンターで毎週開いている。2013(平成25)年に郵便局を定年退職し、民生委員となった住民が「高齢化により地域が活気を失い、住民が孤立している状況」に危機感を抱き、地域住民が寄り添えるコミュニティーとして同サロンを立ち上げた。筋力体操やペタンクを行うほか、専門家の講話や地域課題について話し合うこともある。サロン開始から5年後、NHK ドキュメンタリー番組「秩父山中 花のあとさき・最終章」をビデオ鑑賞した際、「故郷を花が咲く里山として未来に残すには今しかない」と意見がまとまり、花の会へと発展した。
植樹会の約2週間前から、地区の清掃や昼食の献立などを準備。急勾配の会場で参加者が協力し、1時間半ほどで植樹を終えた。その後、地元の女性らが作ったおにぎりや冷や汁、煮物などを食べながら感想を述べ合うなど交流し、午後はセンターでボッチャを楽しんだ。
宮沢集落に住む高橋和巳さんは「私は目や足腰は悪いが、お客さまを迎えるために本気で頑張った。地域がきれいになると、今度はご先祖様に悪い気がして自分の土地も手入れしている」と話す。参加した埼玉県秩父農林振興センター林業部林業支援担当中村雅志部長は「彩を与える緑化木の植樹を通じた住民と地域ネットワークの交流は、集落の景観向上だけでなく他の地域への刺激ともなり、大変意義深い」と話す。