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横瀬町で地域産材の木製セキュリティーブース使い「仕事環境の実証実験」

(左から)伊藤さん、神崎さん、PCに映る柏木さん

(左から)伊藤さん、神崎さん、PCに映る柏木さん

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 横瀬町の「オープン&フレンドリースペース Area898(エリア898)」(横瀬町横瀬)で3月13日、地域産材を活用した木製セキュリティーブースの通信の実証実験が行われた。

伊藤さんが製作した地域産材の木製セキュリティーブース(試作)

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 木製ブースは、横瀬町在住で「TIS」(東京都新宿区)の伊藤淳さんが手がける、IT技術を生かし森林資源の循環利用を目指す「ウッドドリームデッキ」の取り組みの一環で生まれたもの。今回の実験では、同ブース内で衛星を活用した通信サービス「スターリンク」を使った通信環境を検証。ウェブ会議システムを使い、画面共有やリアルタイムの動作確認を行い、遠隔操作や通信の安定性や実際の業務利用の可能性を確認した。

 実験の発端は、ユニファ・テック(千葉県市川市)社長の神崎康治さんが、ウッドドリームデッキの取り組みを知ったことだった。神崎さんは、かつてIT企業で金融機関向けシステムエンジニアとして働いていた。神崎さんは「緊急対応のため、深夜にタクシーを探して出社しなければならないことが起業の原体験になった」と振り返る。休日や夜間も対応を続ける中、物理的な制約を減らして自宅や会社以外でもセキュアな環境で働くことはできないかと考えるようになり、個人宅などにも設置できるブースの開発に取り組んできた。

 神崎さんは「私も岡山県の山間部で育ち、秩父の景色には親しみを感じる。森林がソーラーパネルに変わっていく様子を見て、地域の資源を生かした仕事の場を作れないかと考えていた。セキュリティーを確保しながら働ける環境を整えることで、都市部だけでなく地方に仕事を持っていけるようになる。地域材を使ったブースを作ることで、さらに新しい価値を生み出せるのでは」と話す。

 スターリンクは光回線が整備されていない地域でもインターネット接続ができるため、ブースと組み合わせれば山間部や災害時など一時的に通信が必要な場所でも利用できる。「スターリンクは衛星を使うため、高い建物に囲まれた都市部よりも、空が開けた場所の方が安定した通信が確保しやすい。今回の実験でもその傾向が確認できた。ソーラーバッテリーと組み合わせることで、電源インフラがない場所でも運用できる」と神崎さんは話す。

 当日は、IT企業「ビヨンド」(大阪市浪速区)システムソリューション部長の柏木宏文さんも参加した。ビヨンドは夜勤業務を日本国内ではなく時差を活用し、カナダで日勤帯に業務を行うことで夜勤を根本的に解消する取り組みを行っている。柏木さんは「衛星で通信しているという意識はなく、通常の回線と同じようにスムーズに利用できた」と話す。神崎さんは「国内外を問わず、どこでも安全な通信環境を構築すれば、リモートワークや地方での働き方にも応用できる」と話す。

 伊藤さんは「ウッドドリームデッキを通じて、地域の木材を生かしたものづくりを進めてきた。横瀬町に試作したサウナやミーティングブースを設置したことで、新たな取り組みにつながったのがうれしい。何かを始めることで、次につながる感触がつかめた」と話す。

 神崎さんは「今回の実験を通じて手応えを感じた。地方でのワーケーションや、都市部に依存しない働き方のモデルケースを作れたら。反響を見て、ビジネスとして拡大していきたい」と期待を込める。

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