
皆野町の地域おこし協力隊に深谷市出身の藤野磨緒さんが採用され、3月1日、町内のデジタル化を支援する「デジタルラボみなの」(皆野町大渕)で活動を始めた。同社は事業者のDX(デジタル・トランスフォーメーション)支援を無償で行い、地域全体のITリテラシー向上を目指す。
デジタルラボみなのは昨年10月に設立された。町内の中小企業や行政向けにデジタル技術の活用提案や、業務効率化の支援を提供し、地域おこし協力隊の活動費を財源として運営する。協力隊は任期を満了するまで3年間活動し、その後は同社が直接雇用するという。
藤野さんは、50人以上の応募者の中から選ばれたエンジニア。学生管理システムやブログ運営、自社サイトの構築などの経験を持つ。以前から同町へドライブなどで訪れ、自然や夜景、山道の魅力を感じていたという。藤野さんは「遊びに来るだけでなく、地域のために働きたいと思い転職を決意した」と話す。
藤野さんの役割は、町内事業者の業務効率化を支援し、事業者が既に持っているようなパソコンソフトを活用してデジタル化を進めること。町役場に「デジタルよろず相談窓口」を設け、週2日程度、事業者や行政からの相談に乗る。加えて、月10件ほどを目安に事業者を訪問し、相談を受ける。紙ベースの資料をデジタル保存する取り組みを進めるなど、役場の業務効率化にも取り組む予定。
「デジタルラボみなの」の取り組みは、同町で企業の経営支援を手がける「MAREMI(マレミ)」(皆野)との連携も予定する。町内の事業者が抱える経営課題に向き合いながら、デジタル化の必要性を感じつつも、支援の手が届かない部分もある。「デジタルラボみなの」が行う無償支援を通じて事業者の基盤を整え、より高度な支援が必要な場合はMAREMIに引き継ぐ場合もあるという。
今後、6月ごろから5人ほどの体制での支援を予定しており、地域に根ざしたITサポートの充実を図るとともに、ITサービスの開発を通じて町外や都市部への展開も視野に入れる。町内の学校・役場・シニア団体などとも調整し、IT研修会やスマートフォン教室なども開いていく予定。
黒澤栄則町長は「町内にIT企業ができ、地域おこし協力隊が任期後も町に残り続けられる職場にもなり、とてもありがたい。町内の事業者の中には『自分の代で会社が終わるかもしれない』と悩みを抱え込んでいる代表者もいる。そうした企業からも、直接困り事を聞いて解決していくことができたら。企業にとってDX化に取り組むなど新しいチャレンジの踏み出しには、とても力がいる。取り組みの第一歩の支えとして、大いに期待している」と話す。