暮らす・働く 学ぶ・知る

秩父消防本部、あしがくぼの氷柱で初の山岳救助訓練 観光客らも見守る

氷柱の中を歩行訓練する隊員

氷柱の中を歩行訓練する隊員

  • 0

  •  

 秩父消防本部山岳救助隊が1月24日、横瀬町の「あしがくぼの氷柱」(横瀬町芦ヶ久保)会場で冬季山岳救助訓練を実施した。訓練には救助隊員15人が参加し、氷上歩行、氷壁登はん、搬送訓練などを行った。過去には埼玉県警山岳救助隊が同会場を訓練に使った実績があるが、同本部が同会場で訓練を行うのは初めて。

負傷者に見立てたリュックサックをバスケット担架に載せて搬送訓練した

[広告]

 同本部の救助隊は過去5年間で約210件の山岳事故に対応しており、昨年は36件の出動があった。事故の内容は道迷いや滑落などが多く、冬季は凍結による滑落が懸念されることから、雪や氷を想定した訓練が必要とされている。これまでは秩父市中津川などで訓練を行っていたが、昨今の温暖化により自然に凍結した訓練場所を確保するのは難しいという。

同氷柱は、沢の上流から水をスプリンクラーやホースで散水して凍らせて手作りしたもので、地域のボランティアが管理している。氷柱の範囲は高さ約30メートル、幅約200メートルに及び、今年は1月9日から2月24日まで公開。毎朝7時ごろから担当者が通路の氷の状況を確認し、凍結部分を割ったり除去したりして、来場者の安全を確保している。

 今回の訓練では、チェーンスパイク、アイゼン、アイスピッケルなどの装備を使い、氷上での歩行訓練からスタート。救助隊員たちは通常、救助中に10~15キロほどの資器材を背負うが、負傷者や負傷者本人の荷物を担いで下山することもある。搬送訓練では、負傷者に見立てたリュックサックをバスケット担架に載せて氷壁を登降する姿も見られた。

 氷の塊が落下する際には「らく(落)」と声を掛け合い、周囲に注意を促す場面もあった。同本部消防司令補の浅海裕一さんは「地域の方が維持管理しているあしがくぼの氷柱は、冬季における重要な観光資源でもあるにもかかわらず、訓練場所としてご提供いただいた。有意義な訓練を実施することができ、大変ありがたい」と話す。

 一般観光客は訓練の様子を見て珍しい光景に驚いた様子を見せ、SNSを通じて情報を得た地元カメラマンは現場を見守りながら撮影していた。訓練中、横瀬町観光協会の担当者が隊員からホースの点検時の装備や作業中の注意事項についてアドバイスを受ける場面もあった。

 浅海さんは「山は敵であり、味方でもある。登山される方には、冬山だけでなく夏の山も、一年を通して十分な装備をして、しっかりと計画を立てて登山に臨んでほしい。無理だと思ったら、勇気を持って引き返すことも必要」と呼びかける。

エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース