小鹿野町で移動販売車「とくし丸」のドライバーを務める加藤明美さんが来年3月で同事業を卒業する。約4年半にわたり、買い物に困難さを感じている住民に日々寄り添い、地域に欠かせない役割を果たしてきた。
加藤さんは秩父市大滝出身。高校卒業後に東京へ移り、神奈川や東京でさまざまな仕事を経験。スペイン語を学びたいという思いからバルセロナへ渡り、1年ほどヨーロッパ各地を回った時期もある。帰国後は事務職やアルバイトを経て、友人から同事業の存在を聞き興味を持った。友人らと協力して団体を立ち上げて事業を始め、利用者の開拓やルート作りを自ら進めてきた。
「とくし丸」は、地元のスーパーなどとパートナー契約を結んだドライバーが運営する。加藤さんは矢尾百貨店(秩父市上町)と連携し、住民が必要とする食品や日用品を玄関先や自宅近くに訪れて販売。水曜・日曜を除く週5日、1日平均約20軒を訪問するという。
加藤さんは「お客さまと話す中で、あの人はこれが必要かなと想像して商品を持っていくようにしている。『ありがとう』と言われると本当にうれしい」と話す。住民同士が販売車の到着を待ちながら交流する姿も見られ、「買い物が暮らしの一部であるのはもちろん、日々の楽しみになっていることを実感する」とも。
買い物に訪れていた女性の一人は「近くまで来てくれてとても助かる」と話し、「とくし丸が来る前から集まっておしゃべりしながら待っている。加藤さんは明るく、気さくな人で安心できる」と話す。
一方で加藤さんは「体力面で疲れが抜けず、続けるのが難しくなってきた」と悩みを話す。現在、加藤さんの卒業後を見据え、同じルートを担当できる後任のドライバーを探しているという。「引き継ぎの際にルートを一緒に回りながら仕事を覚えてもらえたら」と加藤さんは話す。「移動販売サービスがまだ十分に届いていない地域もある。三田川、泉田、長若などのエリアでは住民の声を拾いきれていない。体力に自信のある人が興味を持ってくれたら」と応募を呼びかける。