林業を身近に感じてもらおうと秩父高校(秩父市上町)の生徒が企画した伐採体験イベントが11月16日、横瀬町芦ヶ久保で行われた。
全21の地元企業・団体が1年生数人ずつとグループを組み、11月までの半年間、協働して秩父郡市内の地域課題解決を目指す同校の授業「総合的な探究の時間」の一環。林業・製材業のウッディーコイケ(下影森)と共に、林業の実態、課題について深掘りしてきた生徒5人が「授業の集大成」として立案した。
西武鉄道芦ヶ久保駅に集合した参加者は初めに、横瀬町地域おこし協力隊の担当者による林業に関する説明に耳を傾けた後、伐採現場へ移動。混み合った杉の人工林内で、直径約30センチの木1本の間伐に挑戦した。伐採にはチェーンソーのほか、林業の現場で用いる手動式のけん引器具「チルホール」を利用。参加者で協力してチルホールのレバーを操作しワイヤを引き寄せた。
「ミシミシミシ…」――切断部の木の繊維がちぎれる音が林内に響く。同時にゆっくりと杉が斜面下方に傾く。周りの杉の枝をかき分け杉がドーンと倒れると、参加者から歓声が上がった。伐採後は、切り口を例に解説。年輪の付き方や、安全な伐木に欠かせないチェーンソーによる切りこみ方法の「受け口」「追い口」についてなど、参加者が林業への理解を深めた。
イベントを企画した生徒5人は8月までに、ウッディーコイケの製材工場と同社が皆伐・再造林を手がける皆野町金沢の山林を相次いで見学。担い手の減少や木材価格の低迷といった林業の抱える課題に触れる中で、「木が倒れる瞬間の迫力を目の前で感じてもらうことが林業について考えるきっかけにつながるのでは」とイベントを企画した。参加者を募るチラシを作成したり現場を下見したりするなど、準備を進めてきた。
当日は4人が参加し、「切り倒す瞬間は爽快だった。親族が持っている山があるので、森林がより身近に感じられるようになった」「伐採方法や木々のことが知れて楽しかった」などの声が聞かれた。企画した生徒の一人は「参加者には、友人や家族にも体験した事を伝えて林業の面白さを広めてほしい」と話していた。
生徒らの取り組みに半年間伴走したウッディーコイケの小池啓友常務は「『秩高生が秩父の林業の課題解決のためにできること』というテーマに真剣に向き合ってくれた。中学を出たての高校1年生の発案力や役割分担によるイベント運営など、半年間の成長にも驚かされた。自信を持って、これからの高校生活を送ってほしい」と期待を込める。