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秩父「寺尾工げい」 ウイスキー熟成だるを加工したコップやスモーカー発売

「寺尾工げい」の加藤社長と新井さん

「寺尾工げい」の加藤社長と新井さん

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 秩父で木工製造業を営む「寺尾工げい」(秩父市寺尾)が5月30日、秩父でウイスキーを熟成させるために使っていたたるを加工し、桝、カップ、マドラー、コースター、スモーカーの5品を発売した。

「スモーカーセット」はスモーカー、燻製チップ、バーナーがセットになっている。

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 同社は1973(昭和48)年創業。特注家具の製造をメインに、樹脂加工の事業も行っている。昨年から秩父市のウイスキー蒸溜施設から使用済みのたる材を買い付け、「ninomaki(にのまき)」のブランド名で新規事業をスタートした。たる材に染み込んだウイスキーが香る燻製(くんせい)用チップ「WHISKY CASK SMOKE CHIPS(ウイスキーカスク スモークチップ」は「埼玉県新商品AWARD 2023」の工芸・雑貨カテゴリーで入賞した。

 社長の加藤邦彦さんは「樹脂加工の業務が減り、新しいことを始めたかった。市で行われたSDGsの会議に出席した際、たまたまウイスキー蒸溜所の社員と席が隣になったことがきっかけ」と振り返る。できる限り無駄が出ない商品を考え、まずは燻製用チップの販売を2月から始めた。

 昨年夏、クラウドファンディングサイト「Makuake」で同じ材料を使って六角形の桝とマドラーを作らないかと声をかけられたという。樹脂加工の新井仁工場長はこれを機に開発推進部を兼任。「木工品の製造は担当したことがなかったが、社長から相談を受けて挑戦した。樹脂素材とは硬さが全く違い、たる材なのでカーブしていることも悩ましかった。削って平らな厚さ5ミリのパーツを切り出し、底と合わせて7枚のパーツを接着剤で貼り付けている。接着剤だけでは弱いので、さらに切り込みを入れて『かんざし留め継ぎ』という技法を使って強度を持たせた。全て手作業なので、六角桝が作れるのは1日3個くらい。作るのは大変だが、良いものができた」と話す。

 加藤さんは「食器を手がけるのは初めての挑戦。食器に使える専用の接着剤や仕上げの塗料を探し回り、飛び込み電話をかけて取引先を探した」と苦労を明かす。Makuakeでは20万円を目標に掲げ、29万4,620円を達成した。加藤さんは「Makuakeで支援いただいた方へは昨年中に商品を届けられた。それだけで終わるのはもったいないと思い、商品の種類を増やして展開することを決めた」とも。

 今回新たに企画したのはコースター、コーヒーカップ、スモーカー。コーヒーカップはウイスキー樽をイメージした。鉄の持ち手の中に六角形の桝を組み合わせ、飲み口を斜めにカットしており、桝よりさらに飲みやすさにこだわった。スモーカーは丸い台座と金網とふたがセット。スモーカーを食材を入れたグラスの上に置き、ウッドチップを金網に入れてバーナーで10~20秒間燃焼させて煙を起こし、ふたをして食材に香りを付ける。「他社類似製品は、バーナーの火があたる部分が焦げて劣化しやすいものもあるので、内枠にステンレス枠をつけることで、耐久性とメンテナンス性を向上させた。いろいろと試作しながら、最終形が固まるまで苦労した。大がかりな機材を使わなくても燻製が楽しめるので、今回の商品の中では一番のお薦め。グラスの中にコーヒーやビールなどの液体やスナック菓子などの食材を入れて、香りを付けて手軽に楽しめる。スモーカーと燻製チップとバーナーをセットにしたギフトセットも用意した」と新井さんは力を込める。

 加藤さんは「たるの材料であるオーク(ナラ)特有の虎斑(とらふ)柄や香りも商品のポイント。6月22日には商品化したものとは異なる四角形のコースターを作るワークショップを行う予定。削るときにウイスキーのいい香りがする点も併せて楽しんでもらえたら」と呼びかける。

 商品はネット通販やイベント出店を通じて販売する。

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