秩父市立吉田小学校(秩父市下吉田)の体育館で2月3日、3年生の授業の一環で「秩父吉田の龍勢祭」の技法を応用した「ミニ龍勢」の打ち上げ発表会が行われた。
さまざまな背負いものを作動させ、ラストは「大成功」の文字が飛び出した
秩父の吉田地域では毎年10月第2日曜に「秩父吉田の龍勢祭」を開いており、400年以上の歴史を持つ。同祭は椋神社(下吉田)の例大祭の「つけ祭」として行われる神事で、松や竹を使って手作りの「ロケット」を打ち上げて奉納し、国重要無形民俗文化財にも指定されている。
同授業は龍勢祭の伝統を引き継ぐ目的で吉田龍勢保存会と同校が協力して行っており、今年で20年目。9月末から2月まで毎週「総合的な学習」の授業を使い、3年生の児童25人が6~7人ずつ、4つの流派に分かれて「龍勢とは何か」を学びながら児童がミニ龍勢を作り上げる。
児童各自は棟梁(とうりょう)・脇棟梁・口上・太鼓・製造責任者いずれかの役割を担い、口上の作文、口上や太鼓の練習、打ち上げまで実際の龍勢祭と同じように段階を踏み、児童が龍勢を学ぶ。各流派が「理想の龍勢が打ち上げられた完成図」を作り、その「完成図の通りになるよう、牛乳パック、お菓子の箱、折り紙や風船、プリンの容器などで「背負い物(しょいもの)」と呼ばれる仕掛けを作り、竹の矢柄に取り付けて完成させた。
当日の発表会「ミニ龍勢祭」で児童は祭りの半纏(はんてん)を模した手製の衣装を身に着け、自身の流派のミニ龍勢を「わっしょい、わっしょい」のかけ声を上げながら舞台の上に上り順番に打ち上げ発表を行った。
棟梁があいさつ、脇棟梁が龍勢の説明を行った後、口上が流派の説明や龍勢の仕掛けを独特な節回しで述べた。「びっくり箱から月とドラゴンが飛び出す」「かわいいネコさんたちがピョンと出てくる」などの口上や鳴り響く太鼓の音に保護者や1・2年生などの観客は期待に胸を膨らませた。
製造責任者が2階から落下傘を投げた後、ミニ龍勢に取り付けたひもをはさみで切ったり、ゴムを使って飛行機を飛ばしたり、それぞれの背負い物を順番に作動させ、最後には「大成功」の旗が出てきたりするなど、無事に4流派の打ち上げが行われた。
同会の長谷川清美さんは「実際に火薬を使い打ち上げるわけではないが、緊張感は実際の龍勢祭さながら。子どもたちが長い期間集中力を保って、うまくいかず失敗するところがあるから、成功させるために一生懸命考えて協力し合うのが、この授業の醍醐味(だいごみ)」、加藤五郎さんは「初めはどうなることかと思ったが、うまくいって感動した。18歳になれば火薬が扱えるようになり、龍勢の流派に入って本物の龍勢が扱えるので、龍勢に興味を持つきっかけになれば」と話す。
中山浩一校長は「ミニ龍勢の発表会は吉田小学校としてとても大切な授業。この時期に、児童が一人も体調不良などで休むことなく参加できて良かった。『龍勢を作って打ち上げること』が目的ではなく、自分たちで考えて気づきを得るのが大切」と話した。