秩父の「ただかね農園」(秩父市下吉田)が「令和4年度埼玉農業大賞 農業ベンチャー部門」で大賞を受賞し、11月15日、埼玉県知事公館で表彰状が授与された。
右から大野元裕知事、高野宏昭社長、妻の奈美子さん、JA埼玉県中央会小池和明専務理事
革新的な農業経営に取り組む農業者や新規性や独創性のある技術を持ち、今後大きく飛躍が見込まれる農業者、地域農業の振興や活性化に優れた功績を上げている農業者などを表彰している同賞。学識経験者などで組織する埼玉農業大賞選考委員会の選考を経て、埼玉県知事が決定した。
受賞理由に、「ワイン醸造所の搾りかす、菌床キノコの廃菌床など地域資源を活用した堆肥を利用し、地域循環型農業を実践していること」「男女別トイレ・更衣室、アシストスーツや夏場のファン付き作業服を導入し、家族従業員の働きやすい環境を整備していること」「多種多様なイチゴ品種の栽培、バリアフリーに配慮した施設整備など、利用客に喜んでもらえる観光イチゴ農園経営を展開していること」「地元の飲食店や菓子店、都内のカフェなど販売ルートの多様化を図り、コロナ禍をきっかけに通信販売、電子マネーの導入など消費者目線に沿った販売対策を行ってきたこと」などを挙げる。
同園社長の高野宏昭さんは「大地に根付いた土と有機質堆肥で育てたイチゴは、『おいしくて実の締りも良くなる』と、イチゴ栽培を始めた当初からこの方法で取り組んできた。規模も大きくなり、農業が続けられないほどの困難もあった。いろいろな困難を乗りこえる度、多くの方からの支えと助力を得てきた。その方々へイチゴ栽培を通じてどのように恩返しができるかを考え始めたことが、大きな転機になった」と振り返る。
高野さんがこだわる「ワイン堆肥」で育てた「大地のいちご」は、地域から出る有機物を堆肥化して畑に戻して育てていく手法。生産されたイチゴがまたワイナリーでフルーツ酒になり、ワイン堆肥の素材提供者にはワイン堆肥を分けながら、地域密着の循環型農業を実現している。
「数年前までは循環型農業は大変な労力を必要とする古い農業と見られることも多かった栽培方法で、今でこそサステナブルやSDGsと響きの良い名で呼ばれるのは、何だかお日様の光が差し込んできたような気持ち。循環型農業で地域への貢献、本来の農業の伝承、環境へ配慮をしながら『おいしくて実の締りも良い』イチゴ栽培へ取り組んでいく」と意気込む。