秩父の吉田地域で10月9日、400年以上の歴史を持つ「秩父吉田の龍勢祭」が開催される。コロナ禍で2020年から2度中止されたため、今年は3年ぶりの開催となる。
龍勢祭は毎年10月の第2日曜に椋神社(秩父市下吉田)の例大祭の「つけ祭」として行われる神事。各流派が松や竹を使って「ロケット」を手作りし、打ち上げて奉納する。打ち上がる高さは300~500メートルにも及ぶ。白煙を吹き出しながら打ち上がるロケットを龍の姿になぞらえて「龍勢」と呼び、国重要無形民俗文化財にも指定されている。
吉田龍勢保存会には現在600人を超える龍勢師が所属しており、龍勢師はプロの花火職人などではなく、代々地元の農民が行っていたこともあり同祭が「通称=農民ロケット」と呼ばれるのはこのため。手作りのため不安定なところもあり、必ずしも全ての龍勢の打ち上げが成功するわけではない。
龍勢の作り方は、松や竹を使うことは共通しているが、詳細は流派ごとに異なる。火薬筒に詰める黒色火薬の調合には炭と硝石と硫黄を使うが、「しとり」と呼ばれる水分に酒を使ったり水を使ったり、水分を使わない流派もあるという。
切り出してから数年経過させて乾燥させた松材を縦半分に割り、内側に火薬を入れるためにくり抜く。竹を割って「ひご」をひき、ひごから円状の「タガ」を編む。その後、半分になっていた松材を再び1つに組み合わせ、タガで締め上げる。出来上がった筒の中に黒色火薬を詰め込み、何度もたたいて押し固める。火薬を詰め込んだ筒に粘土でふたをしてから、龍勢打ち上げの要となる噴射口と燃焼室を作るため錐で(きり)で穴を開ける。
出来上がった火薬筒に、方向舵となる「矢柄」と落下傘や唐傘や花火などの「背負い物(しょいもの)」を取り付けて龍勢の仕上げとなる。落下傘は、打ち上げた龍勢を安全に下ろすために付けられており、落下傘の形状は各流派によって異なり、矢柄が発射後に2つに別れる「龍の分身」といった仕掛けをする流派もある。
27ある流派のうち今年は17の流派が龍勢の奉納を予定している。7時頃に椋神社で龍勢の点火に使う火をおこす「火取り式」を行い、みこしを使って発射櫓まで火を運ぶ。その後、各流派が発射櫓まで龍勢を運び、導火線の取り付けや発射角度など最終調整を行う。打ち上げる龍勢の仕掛けや特徴や龍勢師の思いなどを口上し、点火・発射を行う。
発射は8時40分頃~13時30分頃を予定し、その様子はNHKエンタープライズがライブ配信を行い、アーカイブ化もする。ライブ配信の詳細は吉田龍勢保存会のサイトで確認できる。