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「横瀬の人形芝居舞台」県有形民俗文化財に指定

横瀬の人形芝居舞台 全景

横瀬の人形芝居舞台 全景

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 横瀬町の「横瀬の人形芝居舞台」が3月10日、埼玉県の有形民俗文化財にふさわしいものとして、県教育委員会で新規の指定が決まり、3月18日に県報告示をもって正式に指定された。

横瀬人形芝居保存会の若林新一郎会長

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 1977(昭和52)年に横瀬の人形芝居は県指定の無形民俗文化財になっており、県指定の有形民俗文化財に今回選ばれたのはこの舞台。

 「横瀬の人形芝居」は安政年間(1854~1860)頃に横瀬村の初代村長、若林又右衛門が若者を勧善懲悪に誘導するために説経節と人形を組み合わせて人形芝居を始め、舞台は若林又右衛門が秩父祭屋台を手掛けた宮大工の荒木和泉に相談して制作されたと伝わる。

 人形は全長70~80センチで首、手、胴輪、着物から成り立っており、片手に胴輪を付け、着物の背中の切り口から手を入れて人形の首を人差し指と中指の間に挟む。着物の袖口から親指と小指を出して人形の手を紐でくくり付け、人形の準備が完成する。空いているもう一方の手で歩く・座る・立つなどの動作を補助したり、人形の首につながるひもを操作して眉・目・口・舌などを動かしたりして、1人で1体の人形を操る。

 舞台は4つの部分から成り、国内唯一の豪華な廻り舞台を後方に置き、手前に本舞台、上手に太夫座(たゆうざ)、下手に囃子座(はやしざ)を備える。組み立てた時の幅は約7メートル、回り舞台と本舞台合わせて奥行きは3.5メートルほど。回り舞台は1辺が2.2メートル、高さ87センチの直方体で、中心を1本の柱で支える。水平に回転させることで、30秒ほどで舞台の場面転換を行えるのが、横瀬の人形芝居の大きな特徴。四面には幕末から明治初期に活躍した「秩父三山」の一人といわれる泉武山が描いたふすま絵をはじめ、板絵・障子・遠見(とおみ)と呼ばれる背景などがある。

 横瀬の人形芝居は少人数を観客として各地で公演を行ってきたため、舞台は解体して運ぶことができる構造となっており、部品の数は約160にも及ぶ。埼玉県から3年ほど前から打診があり、部品一点一点の形状を記録するなどの準備を進めてきた。

 横瀬の人形芝居は現在、22人の保存会メンバーで運営しており、後世に文化を残すために舞台の組み立てマニュアルの作成や、三味線の伴奏や太夫の語りを譜面に起こすなどの活動を続けている。

 横瀬人形芝居保存会の若林新一郎会長は「舞台を考案した若林又右衛門や荒木和泉、ふすま絵を描いた泉武山などの努力や功績がやっと認められ、名が残るようになったことがとてもうれしい」と話す。「コロナの影響で公演や練習の機会が減っているが、この舞台が有形民俗文化財に指定されたタイミングで久々の公演ができそうなので、ぜひ足を運んでほしい」とも。

 次回公演は5月8日13時30分から、横瀬町町民会館で予定している。入場無料。
※掲載当初、上記講演を予定しておりましたが新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、公演は中止となりました。

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