秩父やまなみチーズ工房(埼玉県秩父市下吉田、TEL 0494-26-7638)が10月28日で3周年を迎えた。
社長の高沢徹さんは東京で生まれ、会社員をしていた50代で病気が原因で休職。新しいことをするなら最後のチャンスと考え、退職を機に大好きなチーズ製造へ転身した。
北海道のチーズ工房で修業し、工房は妻の出身地である秩父で開いた。下吉田でワイナリーを営む兎田ワイナリー社長から、同地域は「兎田ワイナリー」「秩父麦酒醸造所」「ベンチャーウイスキー秩父蒸溜所」「日本酒小次郎 タイセー 秩父菊水酒造所」などの醸造所が集中しているエリアで、「どうせ始めるなら近くで」との助言もあったという。
現在の商品は約14種類。「なるべく地元のものを使いたい」と塩水で磨いて熟成させるウオッシュタイプのチーズには、平成の名水百選にも選ばれた「毘沙門水」を使い、仕上げに秩父のウイスキー「イチローズモルト」で磨く。
チーズ製造に欠かせない乳酸菌は市販のものを購入する場合が多いが、高沢さんは地元の乳酸菌を培養して使っている。坂戸の「弓削多醤油(ゆげたしょうゆ)」の乳酸菌や酵母が生きているしょうゆで磨いて熟成させるタイプもあり、「秩父の乳酸菌と坂戸の乳酸菌のコラボレーションによるチーズ」として販売している。
原料である牛乳は地元「吉田牧場」のもの。吉田牧場はエコフィード(食品残渣飼料)に積極的に取り組んでおり、スーパーのカット野菜の端やパイナップルなどの果物、地元の日本酒「武甲」、ウイスキー「イチローズモルト」、ビール「秩父麦酒」の搾りかすなどを飼料に混ぜて資源の有効利用に努めている。
吉田牧場との関係について、高沢さんは「吉田牧場は牛乳を作り、僕はチーズを作る。パートナーとして一緒にチーズを作ってもらっている感覚」という。
牛乳の1割ほどしかチーズにならず、残りはホエイ(乳清)として出てしまう。ホエイは高タンパク、低カロリーで体にいいといわれているため、レストランでうどんのだしとして使ってもらったり、パンやピザ生地に練り込んでもらったりするなどして、できるだけ無駄が出ないようにしている。秩父市内の上原ファームの豚の飼料とし、「秩父ホエイ豚」として徐々にレストランなどでの利用が広がっている。
また、同工房では国産ナチュラルチーズのコンクール「JAPAN CHEESE AWARD 2020 」最優秀部門賞など3部門で入賞した。(リコッタ部門「リコッタ」金賞・最優秀部門賞、ウォッシュ部「ルビー」金賞、白カビ部門「秩父カマンベール」銀賞)
「地元の中で無駄を出さず新しい商品につながれば。SDGsなどの流れに合致するものと考えている。秩父の豊かな食文化の一端を担える存在を目指し、秩父の人や自然が作り出したさまざまな恵みを生かしたナチュラルチーズを作りたい。地域の食卓に彩を添えられる存在を目指しつつ、秩父の良さをより多くの消費者に伝えていきたい」と話す。
営業は金曜・土曜・日曜の12時~17時。月曜が祝日の場合は営業。