民宿すぎの子(秩父市荒川上田野、TEL 0494-54-0963)で11月初旬、わらぶき屋根のふき替えが行われた。
紅葉シーズンを迎え、色とりどりに染まってきた秩父。国道140号線を三峰方面に向かい荒川地区の踏切を渡り、程なくすると民宿すぎの子のわらぶき屋根が見えてくる。
築300年、合掌造りのわらぶき屋根でできている同民宿は、ふき替え職人がいなくなる中、店主の宮崎義彦さんが独学でふき方を覚えメンテナンスを行っている。ふき替え期間は足場を組み始めて12日~15日ほど。わらの搬入や足場を組む時に丸太を持つのを妻が手伝うが、それ以外は宮崎さんひとりでの作業となる。
かつて秩父でもわらぶき屋根の家が数多くあったが、今では珍しい。職人が減るとともに、維持管理しやすい瓦屋根やトタン屋根に変わっていった。
秩父吉田で腕が良いと有名だった職人の加藤さんも高齢になり引退し、埼玉県でわらぶき職人はもういないという。宮崎さんは加藤さんの作業を10年ほど学び、わらをはいで下地の骨組みの基礎から写真を撮った。700以上の工程を独自のマニュアルにして、ひとりでふき替えをするようになったのは4年ほど前から。屋根をたたく道具も杉の根本を使って宮崎さんが自作した。
1本だと細くて弱いわらは持ち方すら難しく、通常、職人は10年で一人前になるというが、その期間を短縮するためイメージトレーニングを繰り返し、空き地に下地を作って打ち込み、わらをふく練習も行ったという。
「わらぶき屋根は光の反射率が強く、室内まで熱が届かないため夏は涼しい。冬になると太陽を浴びて、わらに熱がこもり暖かい。わらにコケが生え、下地の押えの竹が見えてきたら交換の時期。コケは湿度があり屋根には悪影響で、長雨が続くと耐久性、強度も落ちる。いつまでも皆さまに愛される思い出のわらぶき屋根の家を守りたい」と宮崎さんは話す。
客室数は和室5部屋で、40人ほどが宿泊できる。駐車場は12台で、鉱泉もある。チェックイン15時、チェックアウト10時。山の幸、川魚を使った料理を提供する。