
秩父在住の山岳写真家・新井靖雄さんの写真展「雪の屋久島」が9月3日、「カフェ&ギャラリー武甲庵」(秩父市熊木町)で始まる。
新井さんは1946(昭和21)年生まれ。秩父出身の写真家・清水武甲に師事し、谷川や穂高、奥秩父の山岳風景を写真に収めてきた。2002(平成14)年に写真集「奥秩父の四季」を刊行。2004(平成16)年には東京・銀座の「富士フォトサロン」(現・富士フォトギャラリー銀座)で個展を開き、約9000人が来場したという。
同年58歳のとき、鹿児島県の屋久島を訪れ作品制作を始めた。下見をしていた2年間に出合った雪景色に感動し、撮影のテーマを雪山に絞った。新井さんは「雪山へは単独で向かい、登山中はほとんど人に会うことはない。『プラウベル・マキナ』という中判サイズのフィルムカメラ4台、登山用具や撮影機材、食料などを詰めたリュックサックは約80キロに及ぶ。荷物を40キロずつに分けて山小屋へ運び、行きと帰りはそれぞれ2日かけ、中10日は山にこもる。天気が良いときは小屋で待機し、雪が降ったら明け方の写真を撮るために、深夜1時ごろから撮影スポットまで向かってテントを張った」と振り返る。
屋久島には12月~2月、毎月2週間かけて秩父から15年間通い、2020年に写真集「雪の屋久島」を完成させた。7月には「ニコンサロン」(東京都新宿区)で「雪の屋久島」写真展を開催し、武甲庵での展示は、その巡回展となる。
屋久島には九州で最高峰の山があり、頂上には雪も降る。新井さんは「人を寄せ付けない厳冬期の景色」をモノクロのトーンで表現するため中判フィルムカメラで撮影することにこだわった。「私の登山経験を生かして『誰にも撮れない写真を撮る』との思いで雪の屋久島に何度も挑み、永田岳のV字峡岩壁に『エビのシッポ』と呼ばれる氷のつららが無数に密着している情景を撮影することができた。写真の師である清水武甲先生の写真館を改装した武甲庵で、秩父の人をはじめ多くの人に写真を見てもらいたい」と新井さんは呼びかける。
開館時間は11時~18時(最終日は16時まで)。火曜休館。入館無料。会期中は1階のカフェも利用できる。カフェの営業時間は11時~17時。9月14日15時から、2階のギャラリースペースで新井さんのギャラリートークも行う。9月15日まで。