
秩父のコーヒースタンド「ちちぶコーヒー Roast & Research」(秩父市熊木町)が8月8日で1周年を迎えた。地域に根差したブランドとして「秩父らしさ」にこだわりながら、コーヒーを軸に展開している。
コーラとライム果汁を合わせた期間限定エナジードリンク「MINANO BLACK(ミナノブラック)」
当初は自家焙煎(ばいせん)の豆のネット販売のみ行う予定だったが、地域とのつながりから実店舗を構えることになった。この1年間で秩父の1市4町をイメージしたオリジナルブレンドのほか、秩父夜祭や川瀬祭など季節行事に合わせた商品の開発、寺でのイベントやコラボレーション企画やワークショップ、卸販売も含め、さまざまな取り組みを行ってきた。
同店の福田歩惟さんは「1年間の営業を通じ、ようやく季節のサイクルが見えてきたが、利益目的だけのための商売はしたくない」と話す。寺で行うイベントに合わせて抹茶ラテの販売も検討したが、秩父に抹茶の生産背景がないことから、地域で作られた緑茶を使ったドリンクに切り替えた。「ちちぶコーヒーが手がける意味」を考え、土地の特性を生かす姿勢を大切にしているという。
7月末からは「ドリンク強化月間」として、地域の特産や背景を生かしたコーヒー以外の限定ドリンクも順次展開している。第1弾は、横瀬町産のプラムと和紅茶を使った「横瀬プラムティーソーダ」、第2弾は、皆野町でかつて「ウナギが取れていた」という背景から着想を得た「MINANO BLACK(ミナノブラック)」を8月16日~29日に販売。ミナノブラックは定番のブレンドコーヒー「MINANO」をエスプレッソ抽出し、コーラとライム果汁を合わせた「エナジードリンク」。今後も秩父地域の1市4町それぞれにちなんだドリンクを開発していく予定。
ドリンク作りの裏側には、味覚や香りに対する強い探究心がある。商品企画を担う歩惟さんは、国際コーヒー鑑定士や水のソムリエをはじめ、複数のコーヒー関連資格を取得しており、積極的にセミナーやトレーニングを受講。コーヒーなどの飲料だけでなく、果物や野菜、料理や菓子などからも香りのヒントを得ているという。
スタッフ体制も整え、現在は店主の健吾さんと歩惟さん夫婦のほかに2人のスタッフが在籍。うち一人は年内に独立を予定し、もう一人は全くの未経験から現場に立っている。夫婦で始めた店に新たな人の輪が加わったことで、雰囲気や運営にも変化が生まれた。歩惟さんは「『地域をどう良くしていけるか』と夫婦でよく話し合っている。家族だからこそぶつかることもあるし、24時間ずっと仕事をしているような日々だが、それ以上に尊い時間でもある」と話す。
1周年当日には、数量限定で高級品種のペルー産「ゲイシャ種」のコーヒーを用意し、開店前から常連客が店の前で待つ姿も見られた。「この1年間で関わってくれたお客さまの顔がたくさん思い浮かぶ。自分たちでやったことは1%くらいで、多くの人に支えられていて、とても運がいいと思う。2年目に入り、この恩を還元していけたら。新商品の構想も複数あり、やりたいことがたくさんある。開発コストはかかるが、世界に通用するスタイリッシュでおいしいコーヒーを作りたい」とも。
営業時間は10時~17時。火曜・水曜定休。