
小鹿野町の間庭耕地(両神小森)の八坂神社で7月20日、「甘酒まつり」が行われ、参拝者に麦で作った甘酒が振る舞われた。
祭りの担い手は同耕地(集落)の全世帯に当たる13戸。2020年からはコロナ禍の影響や少子高齢化や夏の暑さなどのため休止していたが、熱心な行事役の働きかけにより6年ぶりに開催された。甘酒を地域で作り奉納する祭りは、かつて、旧両神村内の各所でも行われていた。現在まで続いているのは同町の中でも同耕地のみで県内でも希少となっている。
400年ほど前に耕地内で疫病が発生した際、住民が麦甘酒を作って悪疫払いの祈願したところ流行病が治まったとされ、厄よけを祈る祭りとして伝承されてきた。旧暦の7月20日に行われていたが、戦後は7月の第3日曜に変更された。子どもの数が多かった時代は子どもだけで「樽御輿(たるみこし)」を担いだこともあったという。
前日19日の準備では、お札作り、旗立て、甘酒の仕込みを行った。当日は6時に花火の打ち上げで祭りの合図を行い、10時から樽(たる)を担いで練り歩いた。神社に甘酒を奉納し、神主による祝詞の後、無病息災を祈念して甘酒で乾杯した。午後には間庭囃子(はやし)会が演奏を披露。甘酒を飲んだ参拝者は「甘みとほどよい酸味があり、今年の甘酒はおいしい」と話していた。
以前は世襲で麹(こうじ)造りの氏子、麦集め役、こうじを寝かせる係、麦をふかす係、おひまち係、余興係など、明確な役割分担もあり、1週間かけて造っていたという。材料となる大麦を栽培する世帯が減るなどの背景から、12年ほど前からはこうじは造らずに購入している。
氏子総代の石田良男さんは「頑張ってくれる人がいて、みんなの輪があって再開できた。地域がまとまる上で祭りは大切。来年もやりたいし、できれば全軒が出てくれたらうれしい」と話し、氏子の中で最年少の守屋友晴さんは「地域には普段接点がない人も多いが、祭りではそういった人とも交流できる。簡単ではないが、形を変えながら継続していけたら」と話す。