
国民宿舎両神荘(小鹿野町両神小森)の下を流れる小森川沿いの「川ひろば」で現在、ヘイケボタルが見頃を迎えている。今年は6月12日にゲンジボタルが飛び始め、下旬にはヘイケボタルも飛び始めた。
同所は、長さ200メートル、幅80メートルほどのスペース。年間を通して、地元の有志団体「小森川蛍流会」が小鹿野町と協力しながら整備している。ホタルの鑑賞期間中は、会員が現地で解説することもある。
20年ほど前、同所で数匹のホタルが確認されたことからホタルに関する知見や飼育経験を有する数人に縁が生まれ、「ここをホタルの自生地として発展させたい」との思いから同会が発足した。当初は、ごみの撤去、除草、伐採など水路や日照の確保に時間をかけ、幼虫や餌になるカワニナを放流した。その後、埼玉県による護岸工事が始まり、町と話し合いながら、両神荘の排水路をう回させたり、井戸水のポンプアップ工事を調整したりするなど、ホタルが自生しやすい環境を整えていった。2019(平成31)年の台風で自生地が土石流で埋まった際は、行政のほか、地元企業である両神産業や岩田組からの支援も得て復興した。現在では、毎年多くのホタルが自然に世代交代しながら舞うようになった。
コロナ禍前は15人ほどの会員がシフトを組みガイドとして常駐し、県道沿いには案内板を立てていた。延べ3000人ほどが訪れる年もあった。しかし、コロナ禍で活動を休止したことをきっかけに、現在はシフト制をやめ、案内板は立てなくなった。
今年は、6月末時点で約900人が訪れている。リピーターが多く、20年近くにわたり、毎年両神荘に宿泊し、ホタルと同会の活動を見守る人もいる。訪問者らは「仕事ではない方が世話しているなんてすごい」「来年も来るからよろしく」などと声をかけていくという。
同会の岩崎忠昭さんは「優雅に飛ぶホタルの光は、同じ空間にいる人の心を不思議とつなげて和ませる。かつては一人でも多くの人にこの魅力を知ってほしいと願ったが、今では隠れ家的な静かな場所でいいと思うようになった。『やっと癒やしの場に出合えた』という人のためにも、懐かしく、ホッとできるこの空間を守りたい」と話す。
20時ころからが見頃になる。駐車、入場無料。ホタルが強い光を好まないこと、鑑賞に差し支えることを理由に、川に背を向けて駐車することを求めらるほか、ライトの使用やカメラやスマホでの撮影はできない。7月15日ごろまでは観賞できる見込み。